Sunset:ht ページ6
「君さ、それ疲れないの」
夕暮れに染まる教室。いつも一緒に帰る友達より先に部活が終わったので、自席でスマホをいじりながら待っていた。
そこに突然降る声に驚き、私は思わず顔をあげてしまった。声の主は同じクラスのひとらんらん君。いつの間にか私の傍に来ていたが、スマホに夢中で気づかなかった。
「もしかしてイ○スタのこと？」
「んー、あながち間違ってないけどさ」
“無理やり友達に合わせてない？”
その言葉に背中に冷や汗がつたうのが分かった。目を伏せる私を尻目に彼は隣の席へと座る。確かに私は今イ○スタを開いていた。でも、顔には出ていなかったはずだ。どうして彼はそのことを？
「実は鎌かけてみただけなんだけど本当みたいだね。まあ前からちょっと辛そうだなとは思って見てたけど」
思わずヒュッと息をのんだ。
「…それ、私の友達にもバレてると思う？」
「いや？大丈夫だと思うよ」
バクバクと心臓が音をたてる。他人にこの感情がバレてしまうなんて。
私は、他人に過度に合わせることが苦手だ。写真を一緒に撮ろう、一緒にイ○スタライブをしよう、コスメや文房具をお揃いにしよう。嫌だと言えば友情にヒビが入る、そんな綱渡りはしたくなかった。
「ひとらんらん君、お願いだから友達には黙ってて。友情を壊したくないの」
「どうして？｣
「…え、どうしてって｣
「そんな嫌なことも言えないような友情なら、壊して新しいものを始めたほうがいいんじゃない」
言葉が見えない刃となって心臓に突き刺さる。目を見開けばひとらんらん君がすぐ傍まで近づいていた。
「君はそもそも友達に伝えようとしてなかったでしょ｣
「それは、」
「何も言えない関係なんて、それはただ一人でいるのと同じだよ」
からり、と持っていたスマホが机へと落ちる。画面に映る他人の写真が、今は何よりも恐怖を覚える対象だった。
「だからさ、まずは友達と話してみようよ」
「…え？」
「話してみないと何も伝わらないし。何の為に君には口がついてるの」
それに友達も一人でいるのは寂しいよ、きっと。そう言ってへらりと笑う彼。
「話したら、少しは楽になるかな｣
「うん。きっとね」
「じゃあ帰る時に話してみる」
「そっか」
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作者名：*RINGO* | 作成日時：2019年1月6日 23時
