【d！】Crazy for you.【短編集】 (ページ2)

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呪縛:shp ページ2

『別れよう』

吐息も白くなるような冬の日、私は元最愛の人へ別れを告げた。彼は目を数回瞬かせた後、「何でや」と掠れるような声で呟いた。
その声は同棲している私たちの部屋に十分響いていたけれども。

『他に好きな人が出来たの、ごめんね』
「…もしかして、最近よく会ってた男？」
『そうだよ』

私には3ヶ月前からこっそりと会っていた男がいた。会う内に段々と侵食されてショッピへの愛が彼への愛へとすり替わっていく、そんな感覚がしたのだ。
別れを告げるのはとても辛いが、彼がこんな女に拘束されている方が嫌であろうと考え、今にいたる。

『…ショッピ？』

さっきから彼がこちらを凝視したまま動かない。何もかもを見透かすようなヴァイオレットの瞳が、私を縫い止めているみたいで心地が悪い。
ふいに彼がにやり、と口角を上げた。

「そっか、Aへの愛が足りなかったんやなあ。気づかなくてごめんな？」
『何を言ってるの、そんな訳じゃ』
「あの男よりは愛してる自信があったんやけど…伝わってないならもっと愛を与えればええ話やん」

腕を組んでいつもより饒舌に語る姿は、【狂気】という言葉を具現化したような、そんな気がした。

「Aは絶対手放さない。別れたりもしないし、それに_______」

ほら、と見せられた私のスマホ。そこには彼から【別れよう】というメッセージが点灯していて。
一瞬でショッピが根回ししたのだろうと容易に想像できた。

『酷すぎる、ここまでする必要なんて無いじゃん』
「だってこうしないと俺のことを見てくれないでしょう？」

どさり、と投げられた先はベッドの上。私の上にのしかかってくる彼はいつもより獰猛だった。

「もう既成事実さえ作れば離れられないですもんね、ははっ、楽しみだなあ」
『嫌だ！離して！』
「駄目ですよ、これからずっと一緒なんですから」

手首には手錠を落とされ、首には首輪。
うっとりと微笑む彼から、私は一生逃げられない。