別れは唐突に ページ25
「酷い……」
「酷くねぇ！」
縄張りから少し離れた辺り
オレは頭にたんこぶ作ってメソメソ泣くフランシスを更に小突いた
「ったくオレの何がそんなに……」
「え？まだ自覚なし？語ろうか？」
「まだ絞め足りねぇようだなぁ……？」
「あー！やめて！それ以上は脳に支障がでる！」
真顔でまたもバカな事をいい放ったフランシスをオレはまた拳を握る
全く……
「いいか！あの辺りが平和なのはな！オレが嫌われててたまたま物好きが集まった結果なんだよ！わかるか！」
「そんな事ないもん！フレイアは凄いもん！強いもん！」
「聞き分けねぇ奴だないい加減にわかってくれよ！ったく……あんまりこう言う事をオセンチに話す質じゃねぇが仕方ねぇ……」
変に期待を抱かれても仕方ない
こいつには苛烈な海の現実を教えてやらねぇといけない
それで離れるならそれまでだ
「オレの両親はな、餌を獲りに行って死んだんだ。」
「……え？」
ーーーーーー
「母さん見てみて！こんなに魚とれたよ！」
「まぁ！フレイアったらもうこんなに魚が獲れるようになったの？ねぇお父さん見て！」
「おぉ！凄いぞフレイア！将来は群れを率いる
「本当！？」
「あぁ！今頭やってるの父さんが保証してやろう。」
「あらあら子煩悩さん。」
「親なら娘が可愛くて当たり前だろ！」
「ふへへぇ……」
極々平凡な群れ
そんな群れの頭をしていた優しい父とそれを支えるおしとやかな母に育てられたオレは狩りが人一倍上手かった
父さんの事も母さんの事も大好きだった
だから少しでも両親や群れの仲間達の為に頑張りたかった
狩りの練習は人一倍して、外敵から身を守り、仲間を守る術も学んだ
そんなオレを二人とも褒めてくれた
それが堪らなく嬉しくてオレはもっと頑張った
だからこそその報せは絶望以外の何物でもなかった
「おい大変だ！」
「どうした！」
「お頭夫婦がこの悪天候の中渦潮に巻き込まれてっ！」
「っ！嬢ちゃん見るんじゃねぇ！」
「……え？」
あまり餌がとれなくなってきた頃、両親は仲間の為に無理をして遠方まで腕利きを数匹引き連れて餌を取りに行っていた
「すぐに帰ってくるからいい子で待ってなさい。」
「父さん達が腹一杯魚獲ってきてやるからな！」
その言葉が、その撫でてくれたヒレが
二人との最後の別れになるなんて思っても見なかった
「父さん……？母さん……？」
「っ……二人とも俺らを庇って……しばらくして渦が弱まった隙を突いて……それでも、これだけしか……！」
涙ぐむ仲間は両ヒレに背鰭と尾びれを持っていた
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