冷酷悪魔と筆談少年

作戦失敗 ページ21

「くすぐったいぃぃぃ！やめてぇぇぇ！」

その重圧のある低い声からは想像もつかないような情けない声
それを聞いて全ての魔物の主たるルシアが黙っていられる訳もなく

「何やってるんだ貴様はぁぁぁ！」

つい、出て来てしまった

「へ…え…あ…ルシア様ぁぁぁ！？」

ルシアの存在に気づくや否や沼の主は不安定な形の頭を地べたに擦りつけた

「スミマセンスミマセン！今の全部忘れてください！じゃないと俺生きていけないぃぃ…！」

「バカ！子供一人相手に何手こずってる阿呆か！」

「ゴメンナサイィィ…！」

あまりの泣きべそっぷりにルシアは頭を抱えた
と、その時

『ルシアのおともだち？』

気づけばそう書かれたノートを見せながら首を傾げるアルトの姿
本来であればここで全くの無関係である事を示しテキトウにはぐらかしてトンズラするのが最善だったのだが

「馬鹿を言え！コイツは私の従順なる下僕の一人に過ぎんわ！」

友達と言うワードに虫唾が走りルシアはつい、言ってしまった

(あ…)

これで関係があることがバレた
どんな化物よりと強いと思わせてしまった
共にいれば襲われても安心だと決定づけてしまった

『そうなんだ！ルシアってやっぱりすごいんだね！じまんのトモダチだよ！』

我に返るももう手遅れ
アルトはキラキラと目を輝かせてルシアを尊敬と愛を込めて見つめている

(またしてもしくじった…！)

盛大に顔に掌を打ち付けるルシア
これで周囲を使う事は難しくなった
大幅に手立てが失われた今
さらにアルトがくっつく要因まで作りルシアは途方に暮れた

「こんな筈では…こんな筈ではぁ…」

頭を抱え、トボトボと沼から離れようとするルシア
しかし次の瞬間

「のあっ！？」

不幸にもアルトが遊んで撒き散らした泥で滑りルシアは頭から沼に突っ込んでしまった
白いスーツは泥だらけ
顔にもベッタリついている
それを見てアルトは

『いっしょだね！』

と書いたノートを見せるとそれを乾いた地面にポイと投げ、そのままルシアに抱き着いた

「あー…ルシア様その…」

分が悪そうにルシアに話しかける沼の主
しかし次の瞬間向けられたルシアの殺気溢れる眼光にまた情けなくヒッと悲鳴を挙げた

「何も言うな…いいか、これでおあいこだが貴様が私の事口外してみろ、ここら一帯焼き尽くされると思え。」

「ひ、ひぃ！も、勿論です！」

そう言い残して沼の主は逃げる様に沼の底に逃げていった

(全く…最っ悪だぁぁぁ！)

心の中で叫びながらルシアはアルトに成す術なく頭に泥を乗せられるのだった

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