蛇竜は番犬に恋をする (ページ20)

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第十八魔（カルエゴSide）ページ20

「頭をあげろ。」

私は静かにそう言った
何やら誤解をしているようだ
私は別に怒ってないし寧ろ礼を言うべきだ

「確かに貴様の行動は間違いだったかもしれないが少なくとも、私は助かった。本来ならばこういう時私情は挟むべきでは無いのだろうが……そもそも今回の諸悪の根源は入間達にある。だから気を落とすな。」

「失望して……おられないのですか？」

「寧ろ、好感をもてたな。あれ以上の屈辱を浴びずにすんだ。礼を言う……って何故泣く！？」

突然泣き出した彼女に私は少し慌てる
ただその顔は恐怖に怯んだり、悲しみを帯びていない
どちらかと言えば喜びだ
そしてただ一言

「ありがとう……ございます……」

目元を涙で潤ませ、ただ純粋に微笑むその姿は陽光に照らされとても美しかった
いかなる女性にも靡かなかった心が少し動いた気がした
ハッと私は正気に戻る
おい、相手は生徒だろ馬鹿
とにかく聞きたいことがあるのだからそれを聞かねば
私は彼女に向き直る

「にしてもだ。何故あの場で私を助けた？貴様は入間の側にいたようだが……」

「その……お恥ずかしながら、規律を乱した入間様に当初私は憤り使い魔の儀式の翌日勝負を仕掛けたところ負けてしまい、下僕に……」

なんてことだ
彼女程の人物までも負けるとは入間は一体どんな手を使ったのだ

「許せなかったんです。規律が乱されるのが。この学校が好きですし、規律が乱れれば他の生徒に危険が及びます。自己防衛といえばそれまでですが、彼の周囲にはまだ魔術も習いたての一年が多い。怪我をすればただではすまない。そしてその結果は学校の責任にもなる。学校の評判が落ちてしまうのは私としては悲しいのです。」

(ほぉ……)

中々見込みがある生徒だ
昨今までろくでもないものばかり見ていたせいか彼女が嫌に輝かしく見える

「良い心構えだ。今後も精進するように。」

「……！はい！」

彼女はまるで飼い主に褒められたペットのように笑った
その瞬間、私は学食堂に戻っていた
使い魔として呼び出された効果がきれたのだろう
他の教師はあくせく眠った生徒を医務室へと運んでいた

「あ！カルエゴ先生！さっき職員会議でしたのに！理事長が見つけたら理事長室に来るようにと！」

「ウグッ……」

そう、職員会議に行く途中騒動に巻き込まれたのだった
もう職員会議は終わってしまったのだろう
まぁいい
粛々と自分に回された仕事をこなすまでだ

しかしこの後、問題児(アブノーマル)クラスを押し付けられるも理事長命令で逆らえず、苦虫を噛み潰す想いをすることになった