第十七話 ページ18
比較的軽いもの……。軽くて、なおかつ達成が難しいもの……。
悶々と考えを巡らせながら校内を歩く。ふと目に止まったのは、小学生向けに企画された夏祭りコーナーだった。もちろん、その教室以外にも綿菓子などの夏祭りらしいものが売り出されているところはあるのだが、お面やゴム鉄砲の射的などゲームのようなものはここだけだったはずだ。
小学生向け、とは言っているが親子で楽しめるように大人と子供で難易度が変わっていたりするなどの工夫が見られるあたり、さすが貴族クラスといったところだろうか。
そこで遊ぶ子供たちを見ながら通り過ぎようとした時、私の頭に名案が思い浮かんだ。
「おい一。私とひとつ勝負をしないか。」
「勝負……?」
あぁ、と頷いて私が提案したのはヨーヨー釣りだ。それは制限時間内にどれだけのヨーヨーを釣れるかというもので、潮が幼い頃に遊んだ思い出深いゲームでもある。
「ただやると言うのもつまらないしな……。そうだ、少しベタだが負けた方が勝った方の言うことを聞くことにしよう。」
負ける気はしないがな。記憶の中では負け無しだ。いくら一が優秀でも、この勝負は私の得意分野だ。恥をかかせるとはちょっと違う気もするが、とにかくコイツに一泡吹かせてやりたいだけなのだ。
今回の制限時間は1分間。その時間内にどれだけ効率よくヨーヨーを釣れるかが重要だ。ただし、それは糸が切れなければの話で糸が切れたらそこで終了というシビアな面も持っている。
潮はスタッフをしていた生徒に声をかけ、合図を出してもらうことにした。
「それではいきますよ……?よーい、」
生徒が見ている。ここで負ける訳にはいかない。大きなリスクを背負ってしまったことに少し後悔しながら、再度、負けるつもりは毛頭ないと自分に言い聞かせる。
「はじめっ!!!」
ヨーヨーの輪っかにめがけて慎重に針を降ろした。
プールの中にあるのは目測で14個。そのうち2個釣り出来そうなペアは4つ。
瞬時に情報を整理して、糸を動かす。まず1つ目のペアを釣り上げる。これは成功。
紙製の糸は切れやすいので、早いところペアを取れるだけ取ってしまいたい。2個釣りは糸に負荷がかかる分、切れて終了になる可能性が高いのだ。ただし成功すれば、効率よく釣ることができるのは大きい。
一の様子は気になるが、集中力を欠けば負ける。それほど手強い相手だというのは認めたくない事実だった。
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作者名:闇鍋ソース&ナイフ x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mesemoaLOVE/
作成日時:2019年8月18日 20時