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第197話 命乞い ページ7

「分かったよ。私も後で会って話してみる」

「そう?じゃあ、お願いするよ」


そう言うと、夏実は頼まれたことが嬉しかったかのように「任せてよ」と胸を叩きながら笑った。


「あ、そうだ。ちょっとAと沖田君は先に教室戻っててくれないかな」

「え?」

「少し、土方君と話があるの」

「オイ、夏実お前……」

「変な話じゃないよ!」


総悟が何か言いかけたが、その声は夏実によって遮られた。
そして「大丈夫だから、2人で戻ってて」と有無を言わさぬ笑顔で言った。




空き教室を出てから、隣にいた総悟の服を引っ張って言う。


「何の話してんのかな、あの2人」

「知りやせんよ。変な話じゃないって言ってたんだから大丈夫だろィ」

「変な話かどうかなんてどうでも良いの。内容が知りたいの」

「何でィ、あの2人がそんなに気になんのか」

「2人っていうか、話が気になる」

「……とりあえずお前はお前の幼馴染みの心配だけしてれば良いんでィ」


そう言って先にスタスタと歩いていく総悟。

なんだそれ。まぁ、悪い意味で言って無いのは分かるけどさ。
なんだか棘がある気がする。

そんなことを考えながら、その背中を慌てて追いかけた。




A達がそんなやりとりをしている時、空き教室では。


「……何だよ、話って」


土方十四郎は複雑な気持ちだった。

しかし、夏実はまだ話始めない。
総悟とAの足音が遠ざかるのを耳を澄まして聞いている。

そして、足音が止むと。


「土方君、お願いがあるの」


見たこともないほど力強い瞳で土方の瞳を見つめて、そう切り出した。


「あの子はね、何も知らないのよ。本当に」


かつて自分の彼女であった女の見たことも無い目に驚いていると、話が始まった。
その目はもう土方を見ていなかった。


「でも知らないままで良いの。それがあの子の幸せだって信じてたから、私は。
でも、それじゃダメな時が来たみたい」


窓の外を、虚ろな目で見る夏実。
その横顔の美しさに、儚さに、土方は言葉を失った。

――――此奴は、俺の知っている夏実じゃない。




「ねぇ、土方君――――――」



縋るような目で“あること”を頼む夏実。
その言葉は命乞いのような響きすらあった。

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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 沖田総悟   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/  
作成日時:2017年12月13日 20時

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