第196話 実は ページ6
「実は、夏休みの終わる一週間以上前……つまり、面会が出来なくなったあたりからね。龍太の目は覚めていたらしいの」
それから一応夏実もいるので出来るだけわかりやすく、目が覚めていたのに私に知らせなかった理由、龍太が医者の許可が降りた日だけ保健室登校できるようになったことなどを説明した。
と、全て話し終わった所で。
「はい!!質問です!!」
総悟から解放された夏実が手を上げる。
「はいどうぞ夏実さん」
「龍君って学年どうなってるんですか!!」
「分からないけど、もう一回来年から2年生するか、これから補講を大量にとって来年3年生をするかのどっちかでしょ。
どの道、同学年にはなれないはずだよ」
「へい、質問でさァ」
「はい総悟さん」
「龍太の様子がおかしい事、コイツに相談しねぇんですかィ?」
夏実を指差しながらそう言う。
あぁ、そう言えば。
話そうと思ってた夏実にキレられたり、土方が入ってきたりで忘れてたや。
「そうなの、夏実。相談があって」
「よしっ!!ドンと来い!!」
「実は、龍太の様子がおかしくて」
「え?どんなふうに?」
「なんていうか……怖い、んだよね」
「へ?」
素っ頓狂な声で返された。
そりゃあそうだ。
10年以上一緒にいる幼馴染みのことが怖いだなんて。
正直自分でも何言ってるのか分からない。
「怖いって、どういうふうに?」
「どうって……なんか、怒ってるみたいな感じ?気のせいかもしれないけど」
「龍君が?Aに?そりゃあまた珍しいね」
うーん、と腕を組んで一緒に悩んでくれる夏実。
こういう所を見ると、つくづくいい友達を持ったなぁと思う。
「何か心当たり無いの?」
「あんまり……けど、なんか、事故の事をやんわり責められた気がする……」
「……へ?」
急に夏実の声色が変わって、ドキリとする。
この子は、こんなに低い声を出す子だっただろうか。
「あのことは、Aのせいじゃ……」
「あ、いや、龍太も責めてる訳じゃないって後から説明してくれたし。
多分、私の気のせいだよ。絶対そう」
これは多分、夏実に言ってない。
自分に言い聞かせている。
こんなのばっかりだ。今日の私は。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2017年12月13日 20時