第239話 汚い気持ち ページ49
私は龍君が好きだった。
だから、まぁ、思ったことはあるのだ。
――――――Aが消えれば良いのにと。
土方君の時だって、消えれば良いとまでは思わなかったが、徐々に親しくなる2人を不安に思って、沖田君に根回ししたりした。
Aはきっと知らない。
私は抜けてて明るい女の子と思ってる。
とても仲の良い幼馴染みだと。
そんな私が、Aに消えて欲しいとまで願ったことがあると知ったら。
知られたら。
全てを知って、こんな罪悪感なんて介入しない綺麗な友達になりたいのに。
このことを伝える勇気が私には無い。
だから変な自己犠牲に時間を費やして、結果空回りしてこのザマだ。
全部自分のエゴだ。
Aのため、Aのためと繰り返しながら、私自身がAと解決しなくちゃいけない最大の問題は後回しにしている。
知らず知らずのうちにAが私を責めない要素を増やすように動いている。
きっと彼女は私に『私のために動いてくれたの、気付かなかった。ごめんね、ありがとう』などと言って許すのだ。
悲しい笑顔で。
今の私は矛盾だらけだ。
したいこととしてることが噛み合っていない。
「今のままじゃ、お前の望みは叶いやせんぜ。Aはお前のことを責めたりしねぇ」
「そうだよね。やっぱり、嫌われることくらい覚悟でちゃんと言わないとだよね」
「今のお前には迫力がねぇ」
「……沖田君、話が微妙に噛み合ってなくない?」
迫力、とか言われましても。
予想外の言葉に対し、返事に困る夏実などお構い無しに沖田は続ける。
「俺としては、お前は相手に何言われてもされても立ち向かっていくってイメージだったけどねィ。今、その迫力……というか、気力を全く感じねぇんでィ」
「……」
「跳ね除けられて1度は撤退しても、また助走つけて向かっていく。それが品川夏実だと思ってやしたけど」
「それは、Aに対してだからだよ。あの子とは友達だもん、Aも私のこと友達だって思ってる。
でも、龍君は違うから」
龍君は、本当に私のことなんてどうとも思っていない。
私の言葉じゃ龍君には届かない。
20人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2017年12月13日 20時