＊…恋する事を思い出した君に…＊3 (ページ46)

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第236話　泣き寝入りとは違うけどページ46

ところ変わってファミレスにて。
品川夏実は黒さが滲み出ている沖田総悟の笑顔に、命の危機を感じながら引きつった笑顔を向けていた。

「えっと、沖田君?それで、聞きたいことって」

「あれぇ?分かりやせんかィ?
コミュニケーション上級者の夏実さんなら分かると思いやしたが」

「あーはいはい!!怪我の事でしょ!!分かってます!!」

半ばヤケクソになりながらそう返す夏実に「分かってんならとぼけてんじゃねぇ」と貼り付けていた笑みを崩す沖田。

「お前、その怪我ぜってぇ転んだわけじゃねぇんだろィ」

「いや〜そんな10話以上前の話覚えてるとは思わなかったよ〜記憶力良いんだね!!!!」

「メタいこと言ってんじゃねぇ、まだ日付変わってねぇんだから覚えてるに決まってんだろィ。
つか話そらさねぇでくれやす?」

「あー……うん、分かったよ。分かりました……」

冷たいツッコミにこれは逃げられないと確信し、秘密にし続けることは無理だと悟る夏実。
しょうがない、と昨日の朝の事を洗いざらい話した。

Aの成長を邪魔しないでほしいと伝えたこと。
龍太自身も変わらなければならないと伝えたこと。
―――――龍太の投げつけた金属のペン立てで、額が少し切れたこと。

「切った?じゃあ、その包帯」

「うん、少し縫ったから。それを隠すためにしてもらったの」

「縫ったって……大怪我だろィ、それ」

「……跡は残らないようにしてくれるらしいし、別にそんなに気にすることじゃないよ」

いまいち論点の噛み合わない夏実にため息をつく沖田。
そういう意味じゃない。俺が言いてェのはそういうことじゃない。

なんでそんなことをされておいて水早龍太の名前を伏せているのかということだ。
こんなことをしておして、少しも責められないなんておかしい。

「なぁ、このこと他の誰かに言ってんのかィ?」

「言ってないよ。言えないよ。自業自得みたいなものでしょ」

「どこがでィ!!お前に悪いとこなんてなかっただろィ!!」

「話した中ではね。でもホラ。今まで積み重ねてきたことがあるから」

私はずっと傍観してきた。
2人がいかに危うい状況か知っていながら。
2人が離れるべきだと知っていながら。

今まで見て見ぬ振りをしてきたんだから、いきなり口出しをして怒られないわけが無かったのだ。

だからこれくらいは目を瞑ろう。
どうせ黙っていたらバレないのだ。
誰も傷つかないし、誰も悲しまない。

Aも、私も、龍君も。