第231話 名前を付けて ページ41
「ねぇ、なんで土方はそんなに私と友達になりたいの」
「なんだその質問。自意識過剰みたいだな」
「私にはさっきからの土方の言葉がそう言ってるように聞こえたけど?」
チッと小さく舌打ちされる。どんな照れ隠しだよ。
ここまでの話からお前が私と別に友達になりたいわけじゃないって方向に会話をもっていくのは無理だと気付け。
「そうかー土方君は割と私のこと好きだったんだなぁ。照れちゃうな」
「うるせぇな。別に好きなんて言ってねぇだろ。嫌いじゃないだけだ」
「ツンデレかよ。素直になっときなって」
「……『好き』なんて、俺達が言っちゃいけねぇ言葉だろ」
――――それは
「何言ってるの。まさか『好き』が恋慕の情としての意味しか持たないだなんて思ってるんじゃないでしょうね。私達は、そういうのじゃないでしょ」
「でも、俺達は友達じゃない」
心臓が跳ねる。そう言ったのは私だ。
だけど。
「友達じゃなかったら何?」
「友達でも親友でも無い。かといって知り合い程度の関係であるわけでも、ライバルや敵同士ってわけでもない」
「だから、それがどうしたのよ」
「俺達の言う『好き』には、あらゆる意味があるって事だよ。あらゆる解釈が出来るんだ」
「でもそれに『恋』としての意味なんて含まれていな……」
「俺達はそう思っても、夏実はどうだ」
そうだ。夏実は、私達の交わす言葉にそういう意味があると考えるかもしれない。
そしたら、まるで。
私のせいで夏実の恋が実らなかったようになるのか。
それは嫌だ。
「関係に名前の無い俺達が親しくすると、そう勘違いされてもおかしくねぇよ。
俺は、お前には夏実と気まずくなって欲しくねぇ」
そうなるのは嫌だ。
だけど。
「だから、名前を付けたくないなら嫌ってくれ。最初みたいに。
夏実は俺より友達想いだから大切にすべきだ」
「嫌だ」
「なら、何かしら名前を付けるべきだ」
「だからさっきも言ったけど、それは出来ないよ。嫌いになることだって。
今でも君のことは好きな訳ではないけど、嫌いかって言われたらもう返事に困っちゃうもの。
相当最低なことされないと、また嫌いになることなんて」
「―――そうか」
次の瞬間。
いきなり肩を掴まれた私は、言葉を発する間もなく視界を大きく回転させられることになった。
唐突で普段なら非現実的なことであるはずなのに、私の頭はすぐに状況を理解した。
私は土方によって、彼のベッドに押し倒されたのだ。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2017年12月13日 20時