第229話 やさしさ ページ39
「え、なんでため息」
「いや、お前が前に、俺に俺の優しさは残酷だって言っただろ。その意味がよく分かったよ」
「え、何。何で」
確かにそんなこと言ったけど。
君はなんだかんだ言いつつ誰にでも優しいから、興味の無い女子にさえも。
だから、確か夏実と別れるとか言ってた時に、優しさを出すなと言ったはずだ。
でも、どうして今。
「お前、俺と友達にも親友にもならねぇって言ってる割に、なんでそんな優しくするんだよ」
「そうかしら。私はただ、倒れるほど眠ってない同級生を心配してるだけだけど」
「でも、そうだとしても、やっぱどうしてって思っちまうレベルだよ。お前のは」
「……私は、土方に借りを返さなきゃいけないから。土方にもらった分の優しさを返してるだけよ」
「そうか、なら、俺は相当残酷なことをしてたんだな」
完全に俯いてしまった土方は表情が見えない。
懸命に覗き込もうとするが、黒い髪が邪魔をする。
なんとか顔を見てやろうと頑張っていると「実はよ」といきなり話し始めた。
「俺が文化祭の後、寝不足だった原因はお前だよ」
「………はい?」
「お前が、あんなこと言うから、そのことばっかり気になっちまって」
「え、何?私、何か言った?」
そんな眠れなくなるほど悩む言葉言ったか?
脳みそをひっくり返してみても全く心当たりがない。
混乱していると、土方顔を上げて私を見た。
死にそうな目をしていた。
「お前が、俺とお前の間に名前を付けたくないって言ったんだろうが……!!」
え、なんで、そんなこと。
確かに言った。言ったけど。
そこまで気にしてるなんて、今まで一言も言ってくれなかった。
「待ってよ土方。何に悩むの。名前なんて意味が無いって言ったの。しがらみになるだけだから、やめようって」
「意味がないなら、あってもいいだろうが…!」
いやまぁ確かにそうなんだけど。
でも、ダメ。君はダメだよ、土方十四郎。
「ダメだよ。名前は付けられない」
「なんで…」
「私は、土方だから、友達って言うのも、親友って言うのも怖いんだよ」
「……どういう事だよ」
「だって」
だって君、いざと言う時になったら。
「私に優しくするじゃない」
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2017年12月13日 20時