第227話 ちょっと前のこと ページ37
「土方?おーい、聞いてんのかコラ……マジかよ」
時を遡ること数十分前のお話です。こんにちは福田Aです。
一緒に帰ってたクラスメイトの土方君が倒れてとても動揺しているよ。嘘だよ冷静だよ。
倒れた土方を助けるより、私の上に倒れてきた土方からの脱出を試みたいわけです。
ま、怪我しないように若干気を使ってくれているところは賞賛に値するけどね。
「えーと、鍵鍵…」
勝手にポケットをまさぐって鍵を見つけ出し、なんとか土方の体の下から脱出した。
その際二三回体を蹴ったが非常事態だし問題ないだろう。
玄関の鍵を開けて、ドアを固定してから土方の腕を肩にかけ、なんとか家の中に入れる。
その際土方の足が何度かその辺にぶつかったけどこれもまあ問題ないだろう。
さてと。とりあえずこいつの部屋を探すか。
玄関に放置して、勝手に家のあらゆるドアをガチャガチャ開けたり占めたりする。
これもまあ許されるだろう。
これ絶対土方の部屋だ!という部屋を見つけた、その時。静かな屋内にけたたましい着信音が響く。
「うわ!!何!!」と思わず叫ぶが、何もクソも無い。私の携帯のメールの着信音である。
見ると、龍太からのものだった。
内容は『今日、会いたい。病院に来て欲しい』とのこと。
……行きたくない。
昨日の山橋君との会話を思い出す。
謝る決心はしたけど今はまだ待って。覚悟がいるから待って。というか土方君をなんとかしないといけないから待って。
見なかったことにして、携帯を鞄にしまう。
とりあえず部屋に土方を運ばなければ。
玄関に戻り、土方の片腕を再び私の肩にのせる。
おっも。
土方君の部屋2階だったけど大丈夫だろうかこれ。
息も絶え絶えになりながら、なんとか階段を上りきった。
その間メールは三、四通届いた。
さすがにしつこい。そう思ってマナーモードにしようとすると、次は電話の方の着信音が鳴り出した。相手はもちろん龍太だ。
「ちょ、うっさ」と慌てながらマナーモードにする。
一体なんなんだ。こいつ。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2017年12月13日 20時