第218話 懐かしいやつ ページ28
翌日。龍太は学校を休んでいた。
夏実は無事登校してきていたが、見た目的には全然無事じゃなかった。
「夏実ィィ!!どうしたアルかその頭の包帯!!」
「うっ……昨日の放課後っ……Aが私の事が気に入らないって……いきなり突き飛ばしてきてっ……」
「多分それもう流行ってないよ。おはよう」
「あ、Aおはよー」
懐かしすぎてレアなやつするのやめなよ。
ケロッと表情を変える夏実の頭には薄くだが包帯が巻かれていた。
おそらく昨日の欠席の理由だろう。
「大丈夫なの、それ」
「うん!!へーきへーき、痛くなーいっ」
そう言って自慢気に包帯の巻かれている部分を手のひらでペちん、と叩いて「いったぁ!!」と叫んでいる。痛いんじゃねぇか。
「どうやったらそんなところ怪我できたの」
「いや〜、ぼーっとしてたら階段から転んじゃって」
「……ふーん」
その返事の仕方と内容に若干の違和感を覚えた。
しかし、いつも嘘が下手くそな夏実だし、ここまで上手に嘘をつけるわけないか、と気にしないことにした。
私の背後のドアが開いて、眠そうに欠伸をする総悟が入ってきた。
入ってきてすぐ、夏実を見つけて「おや」と呟いた。
「夏実来てたのかィ。その頭は昨日言ってた……」
「あ、沖田君おはよう。そーなの、階段で転んじゃってさー」
「へー」
「ちょっと何?Aも沖田君も、『へー』とか『ふーん』とか。聞くならもっと興味持とうよ」
「持ってまさァ」
「持ってる持ってる」
「嘘下手くそ過ぎない?」
ばれたか、と総悟と小さく笑い合うと、夏実が「もー!!」と不満そうに声を挙げた。
続いて土方が登校してきた。
やはり初めに夏実の頭の包帯が目に入ったようで「思ったよりヤバそうな怪我じゃねぇか」と、驚いていた。
「大丈夫だよ。ちょっと病院の先生大袈裟なんだよなー」
「お前が呑気過ぎるだけじゃね?」
「……Aと沖田君と違ってちょっとは気にかけてくれてるんだろうけど、なんだろうこの感じ。なんか、あんまり嬉しくない感じ」
うーむと唸る夏実に「貶されてるからじゃない?」と言ったが、即座に土方に否定された。
「貶してねぇ。こいつが呑気で能天気なのは事実だろ。本当のことを言っただけだ」
「いやいやいや、そっちの気持ちとしてはそうかもしれないけど私は凄く貶されてる気分!」
「夏実、あんまり興奮すると傷口開いちゃうよ」
「A達が興奮させてるんだけどね!!それにそんなひどい傷じゃないんだってば」
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2017年12月13日 20時