第217話 私は ページ27
「オイ、だ、大丈夫かよ」
想像以上に衝撃を受けていたようで、目の前で振られる手のひらに数秒気づけなかった。
「あぁ、うん。大丈夫、多分」
「大丈夫じゃないやつだろ、それ。
気にすんなよな。さっきのはあくまで予想であって、事実じゃねぇんだからよ」
「いや、多分事実に限りなく近いよ」
今まで考えたり聞いたりした事の中で、一番辻褄が合う。
まだ目覚めた後の龍太本人にも会っていないのに、私より先に私がこんなに納得いく理由を思いついてしまうなんて。
やっぱり山橋君はおもしろい。
「で、俺の予想が当たってたとして、お前はどうするんだ?」
「……謝るよ」
「は?」
心底何を言ってるのか分からない、という声だった。
そんな声出さなくても。
「だから、私は龍太に謝るよ」
「いやいやいや、なんで」
「何でって、故意にではないけど私が龍太を裏切ったんだもの」
「いや、裏切ったってお前……自分以外の奴と友好関係もっちゃいけないとか考える奴だいぶヤバイぞ?本来はお前は謝らなくてもいいんだよ」
「そうかもね。龍太は客観的に見ると、かなりやばい奴かもしれない。でもね」
でも。例えそうだとしても。
「私は私のせいで、友達が傷付いたのなら、謝りたいって思うよ」
これはわたしがしたいことだから。
龍太の為じゃなくて、私のための行為だ。
「許してもらえなくて、今後違う道を歩むことになってもいいよ。山橋君の話を聞いて、龍太との今までの関係は少しおかしかったんじゃないかって思ったから」
「少しじゃなくてかなりな」
「かなりって程でも無いんじゃない?」
「うわ、お前分かってねぇよ」
「うるさいな。
まぁそれはともかくとして。私と自分以外の奴が仲が良いと気に入らないなんて、龍太のためにならない。1度話し合うべきだよ」
山橋君は、驚いたように目を見開いて、呆れたのか安心したのか、よく分からないため息をついた。
「それは一体どういう感情なの」
「別に。変わったなと思って。お前」
「私が?……そうかもしれないね」
きっと去年までの私は、君から同じ話をされても耳も傾けなかったんだろう。
私が変わったのは、3Zという環境の、何より、こんな私とめげずに一緒にいてくれたあの3人のおかげだ。
山橋君が微笑む。
そういう顔は、初めて見るな。
「俺は今のお前の方が好きだな」
「なにそれキモイ」
「死ね!!」
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2017年12月13日 20時