第208話 昨日の頼み事 ページ18
「沖田君は、龍君から君を守ったんだからね」
「は?どういうことだ?……お前、昨日からおかしいぞ、あの頼み事といい……」
「ごめんね、何言ってるか分かんないよね。詳しいことは絶対タイミングをみて説明するから、今は昨日言った通りにして」
言われなくても、あんな助けを請う目をした奴に頼まれたんだ。何か言えない事情があるんだろうし、素直に聞く気はある。
というか、タイミングって何だ。
何のタイミングだ。今は言えない事なのか。
でも総悟は、俺を守るとからしくないことをしたらしいし詳細を知っているのだろう。
「分かったよ。けど、絶対近いうちにちゃんと話せよ」
「……ありがとう、土方君」
そう言って、夏実は微笑んだ。
酷く弱々しい目で。
今は保留にすることを許したが、だからといって気にならない訳ではない。
あの頼み事といい、見せる表情といい、ここ2日の夏実は明らかにおかしい。
「ちょっと、なにしてるの」
「何2人でイチャイチャしてんでィ」
前を歩いていた2人が、俺達が立ち止まっていることに気付いてそう急かしてくる。
夏実は「イチャイチャなんてしてないよ!」と2人に駆け寄る。
ついさっきまで考え事をしていた俺は、すぐには足を出せなかった。
そんな時、Aと目が合う。
「なに突っ立ってんのよ。昼休み中にトイレ行っておきたいんだから、さっさと歩いてよ」
「お、おう」
言葉に詰まった俺を気にする事なくAは再び歩き出す。
トイレに行きたいなら、先に行けば良いだろと思ったが、結局それは口から出ることは無かった。
前を歩くAの後ろを歩く。
俺より小さなAのサラサラと揺れる髪ばかりが目に入る。
夏実はあの日、俺にこいつを任せたのだ。
まるで救いを請うような目で。
この本当は強くも無いくせに、すぐに威張ってみせて、抱え込んでしまうこいつを。
2人は10年以上も一緒にいるのだ。
そんな奴から任されたのだから、これは大役だ。
そんな事を、昨日の夏実の昨日の言葉を頭の中で反芻しながら思っていた。
『ねぇ、土方君―――――これからしばらく、Aのそばから離れないで』
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2017年12月13日 20時