＊…恋する事を思い出した君に…＊3 (ページ14)

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第204話　大人になる子供と拒む友ページ14

Aと夏実と龍太は幼馴染みだ。

Aの親は、いつも忙しく、Aの世話は親に雇われた家政婦に任せ切りにされてしまっていた。

そんな、愛情に飢えていたAに手を差し伸べたのが、龍太だった。

そんな状況で差し伸べられた手をAが拒むはずもなく。
思えば2人の異様な関係は出会ったときから出来ていたのかもしれない。
Aは龍太のくれる愛情に依存して、龍太はAが自分を求めて信頼してくれることに依存した。

小学校3、4年あたりから、夏実は龍太がAの事を好きなことと、自分のことにそもそも龍太が興味など無いことを悟り、2人から距離を置くようになった。

そこから、龍太の内に秘められていた独占欲が膨らみはじめた。

Aと過ごす時間を増やし、自分以外との接触をさせないようにした。
別のクラスメイトと話している時に、わざと呼んで、会話を中断させた。

今までAに極端に友達が少なかったのは、Aだけのせいではない。
この頃から、龍太以外とのコミュニケーションをほとんど取れなくなってしまったことも少なからず関係しているはずだ。

そして、友達の少ないAは、家でも学校でも寂しさを覚えるようになり、ますます龍太に依存した。

2人の世界に居るような関係性は、傍から見てとても侵入しづらいものだ。
周りは極力2人の邪魔をしないようにし、Aはさらに外との関係が作りにくくなる。その悪循環だった。

「私はね、その事がずっと気がかりだった。だって、ずっと2人で一緒になんていられる訳ないのに。
互いがいなきゃ自分がダメになっちゃう関係なんて、絶対におかしいよ」

そりゃあそうだ。
声を震わせる夏実に、沖田は心の中で深く頷いた。

そんなのは、親愛じゃない。
ただの共依存だ。

「龍君が怒ってるのは、多分、Aが外の世界を知っちゃったからだよ。自分以外の人間と、ちゃんと話せるようになっちゃったからだよ。
だから、事件の事を責めて、Aに無理やり自分のところに戻って来させたいんだよ」

「Aはそのことに気付いてねぇのかィ」

「一年前までは気付いて無かったと思う。でも、今は多分薄々気付いてるよ。気付いた上で、信じたくないと思ってる」

あの子は変わったから。
沖田君や土方君と出会って。
前より強くなった。龍君が居なくても笑えるようになった。

だからこそ、龍君の異常さに気付けた。

大人になれたAを、また子供に戻すのは間違ってるよ。