第203話 彼のはなし ページ13
空はもう真っ暗だ。ファミレスから見える国道を走る車の光が忙しなく動く。
2人の話の核心に触れる前に、夏実はそれに視線を移して、何やら考え込んでしまった。
沖田も、夏実の決心が固まるまで待とう、と夏実の視線と同じ方を見た。
『Aは僕から逃げられない』
昼休みに聞いた言葉が耳から離れない。
声も、奴の表情も。何もかもが一瞬前の事のように思い出せる。
あれはどういう意味だ。
あんな気ままに生きてる奴が、人に強いこだわりを持たいない奴が、幼馴染みの男1人から逃げられないだなんて。
いや、違う。
最初からAは水早龍太には異様に拘っていた。
あれが、事故に間接的に関わってしまったことだけが原因じゃないとしたら――――――
「よし、うん。大丈夫」
夏実が突然決心がきまったようにそう頷く。
考えているうちに自分の世界に入っていた沖田はそれに小さく肩を跳ねさせた。
「あ、ごめんね。びっくりさせちゃって」
「いや、大丈夫でさァ。もう話せるんですねィ?」
「うん。もう大丈夫」
そう言うと、ぽつりぽつりと夏実はAと龍太の関係について話し始めた。
「Aはね、子供のころから寂しがり屋だったの。今でも人をいじるのが好きなのはきっとその性格のせい。
それを、龍君は利用しようとしたの」
瞳は、ガラスコップの中に入った烏龍茶の水面を見ていた。
その水面に移り込む電気の光が眩しいかのように、昔を思い懐かしむように目を細めて、弱々しい声で語る。
「龍君はいつでもAと一緒にいて、いつでもAが寂しくないように振舞ってた。
Aとくだらない話をしていつまでも笑って、じゃれあって。
それまでは良かったの。でも」
細めていた目をゆっくりと瞑る。
過去の見たくなかったものを押し潰すように強く瞑る。
「龍君は、おかしくなっちゃったの」
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2017年12月13日 20時