第191話 歪み ページ1
平穏すぎると、脳が麻痺してしまうのだろう。
だからきっと、これは彼ではなく私の方が異常なのだ。
十一月に入って数日が経った頃のことだった。
銀魂高校では毎年、3年生のために十一月から朝補習が開かれていた。
私も無論参加しているのだが、今日はいつもより早い時間にきていた。
理由は、昨日の夜銀八が送ってきたショートメールにある。
『朝補習の10分前に来て、保健室に寄って欲しい』とのこと。
これのせいで私はいつもより早い登校を余儀なくされた訳だ。
因みにいつもはギリギリに駆け込んでいるのでこれは結構私にとって苦行であったりする。
下らない用だったらシバいてやる、などと思いながら、保健室のドアを開ける。
既に2分遅刻しているが私は気にしない。
しかし、気にしていたとしても数秒後にはきっと忘れていただろう。
ドアの向こうには2分如きどうでも良くなるような物があった。
いや、「物があった」というのはこの場合不適切だ。
「者がいた」とした方が良いだろう。
いや、そんなことはどうでもよくて、とにかく私は混乱が1周回って逆に冷静になっていた。
冷静になりすぎていて、だからこそ有り得ないことだと思って、その情報を処理するのに時間がかかった。
だってそこには。
「――――龍太」
私の中で、そこに居るという可能性にすら入っていなかった、ずっと待っていた幼馴染みが居たのだから。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2017年12月13日 20時