ありおか恋愛相談所３

けとちねの場合 ページ33

知念side



もうあっという間に高校三年生になってしまった。
それにもう5月。
まだ5月じゃないか、という人がいるけれど、受験生にとってはタイムリミットが刻々と近づいて来ているのだ。焦るのも無理はない。




「圭人は、大学に行くの…？」



受験を控える恋人たちの試練と言ったら、進路であるだろう。
地元に残るならまだしも、お互いに距離が何十キロ、何百キロも…それ以上の距離で離れ離れになる可能性だって低くはない。


しかし、僕の恋人はもっとひどい。
英語が得意でペラペラで。
事ある毎に「外国に行きたい」と言っていた。
進学先が日本にとどまらず、留学…なんて選択肢も彼には大いにある。
ほら、ひどいでしょう。



「うん、大学は一応志望してるよ」

「一応…？違う場合もあるってこと？」

「あぁ…まあ…うん、、」


彼も痛いところを突かれたらしい。
様子を見ていると、圭人もこの話題を避けていたようだ。でも、いつかは話さなきゃ行けない時が来る。


「留学することは…考えてる…けど、」


この先に、圭人が何を言うのか容易に想像がついた。

でも、その言葉は言わせたくなかった。



「やだよ。僕のせいで圭人が留学できないのはやだ。僕と留学で迷ってるなら、そんな必要ない。留学を選ぶべき。」



息継ぎもせず早口でまくし立てたのは、強がってることを悟られたくなかったから、だ。



「でも…ちぃちゃんのこと、放っておけないよ…」

「何言ってるの。僕、子供じゃないんだよ！」

「分かってるよ…でも、、一緒にいたいんだよ…」



息を飲んだ。

今にも泣きそうな。苦しそうな。最近の涼介がしてるような顔になった圭人。


『一緒にいたい』


全力で叫びたくなった。僕もだよ、って。




でも……僕ね、誰よりも知ってるんだよ。

圭人は英語が大好きなこと。
留学することが夢だったこと。
留学したらやりたいこと。

他にもいっぱい、いっぱい。

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