(77)His first. ページ38
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近くに居た同い年くらいの男と談笑していると、内ポケットに入れていた携帯に着信が入った。
一寸すみませんと画面を見ると、発信者は中也だ。
『噂をすれば、上司から電話です』
「アハハ、どうぞどうぞ」
『すみません』
中也と同じ様にAも扉の外へ出ると、丁度其処に彼が居た。
『何かあった?』
「悪りいが、俺は今から拠点に帰る」
『はい?』
結果から告げるのは中也の悪い癖かもしれない。
何があったんだ、と中也を見るAの目が云っていた。
「陽和が倒れたって電話が来た。今拠点の医務室に寝てるらしい」
『…今日はお家に帰したって聞いたけど?』
「俺も事態の把握が追い付いてねえ。此処からの指揮は手前に任せる、何か大きな問題が生じたら直ぐ連絡しろ」
『"大きな問題"の具体的な定義は』
意地悪く訊くAからは不機嫌な
未だ先入観でしか陽和を捉えていないAは、帰したと聞いた筈の彼女が拠点に居た事も、其の小娘が勝手に倒れたせいで中也が居なくなる事も厭でしかなかった。
指揮官役をするのだって、慣れてはいるが好きではない。
「手前は勿論、身内が武器を向けられたら連絡しろ。判ったな」
『……判ったよ』
気持ちをリセットする為、大きく深呼吸をした。
眉間の皺もすっかり消え、中也はAの切り替えに少し感心した。
だが、気持ちなんてそう簡単に切り替わるものではない。Aは仮面の上に仮面を被ったにすぎない。
内心、苛々は募るばかりで収まっていなかった。
『すみません外してしまって』
「いえいえ、大丈夫でした?」
『ええ、書類の期限を確認されただけです』
「そうなんですか。嗚呼それで、何の話でしたっけ?」
『ええと…嗚呼、ワインの………』
結局其の後特に騒動や暴動は無く、会合は終了した。
Aは部下へ書類での報告を指示し、独り迎えの車に乗り込んだ。
眠りたいが、今は独りだ。其れは叶わない。
「陽和が倒れたって電話が来た」
そう中也が云った時、一瞬でも『だから何?』と云いそうになった事を思い出す。
陽和は彼奴の婚約者なのだから、行くのはまあ当然なのだろう。
だが、同時に気付いた。
もう自分は中也の1番でないという事。
其れをあまり良く思わない自分がいる事。
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ヤマダノオロチ(プロフ) - Yuukiさん» ありがとうございます!やっと構想がまとまってきました。これからもよろしくお願い致します! (2017年2月18日 23時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
Yuuki(プロフ) - とても面白かったです!スランプで大変だと思いますが、これからも頑張ってください!応援してます!! (2017年2月18日 23時) (レス) id: 3720d37733 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 天さんさん» コメントありがとうございます!上から目線だなんてそんな事無いですよ!?お褒めに預かり光栄です(>_<)最近はラブソングばっか聴いてて、主と中也くっつけたい〜とか考えてます(笑)これからも頑張ります! (2017年2月14日 20時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
天さん - う、上から目線で失礼しましたぁああッ!! (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
天さん - スランプ大変ですよね…文章とか読みやすくて好きです!頑張ってください(*´ω`*)ちなみに、私はスランプの時は曲を聞いてます。曲聞いてるとネタがポンポン出てきますので…!これからも応援してます(´˘`*) (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2016年9月4日 20時