重力、夢中力…弐｡【中原中也】

(63)Bad Dream…? ページ24

.


『…ねえ、中也』


あ？んだよ。


『私ね、結婚するんだ』


…は？誰とだよ。てか急すぎねぇか？


『ごめんね…ごめん…』


待て、色々説明を…


『じゃあね』


おい、待てって！なぁ!!




「Aっ!!!」



ソファの軋む音がした。俺が飛び起きたせいだ。

額や顔、背中にまでグッショリと汗をかいていて、衣服が張り付く気持ち悪い感触がする。

嗚呼…夢か…。




「寝覚め悪すぎだろ……」



とりあえずシャワーを浴びよう。

此れだから徹夜なんてするもんじゃなかった。
やっと書類を捌き終えて、疲れて倒れ込む様に寝てみれば此のザマだ。

夢にしてはヤケに現実的(リアル)だった。




「………」



水滴が肌を叩く。汗と汚れが洗い流されてさっぱりするはずなのに、何処か気持ち悪さが残る。



『あ、おはよう中也。何処行ってたの？』



執務室へ戻れば、何時も通りデスクに座って本を読んでいるA。

途端に先刻の出来事を思い出して、胸の辺りがざわつく。



「シャワー…」

『そ。結局徹夜したんだ』

「嗚呼、終わンなくてな。…A」

『何？』



ダークブラウンの瞳が俺を見つめた。

何もかも見透かされそうで思わず目を逸らしながら言葉を続ける。



「結婚したいとか、思うか？」

『は？何急に。きも』

「五月蝿ぇ！」

『はぁ…したいも何も相手が居ないンだけど』

「…そうかよ」



本当に何？と訝しげに眉を寄せるA。

その時、目の前のパソコンにメールが1通届いた。




【今からコッチに来てくれ】



『誰から？』

「首領だ。一寸行ってくる」

『行ってら〜』


目が冷めてから消えない厭な予感を抱えた侭、俺は再び執務室を出た。

.

(64)予感と予兆→←(62)たぶん副作用

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す