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きっと其の五十四 ページ4

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ポロポロと涙を零し続ける柚杏に、中原は一瞬困惑の表情を見せた。

女に泣かれるのは苦手だ。
しかも今日はこれで2回目、いい加減にしてほしい。溜息を吐きながら壁についていた足を下ろし、少し黙り込む。


「私を殺す?中也」
「殺さねえよ。俺の独断ではな」
「そう…………どちらにせよ、AAへの復讐は終わらない。私じゃなくても、殺そうしている奴はまだ沢山居るわよ」
「次、彼奴にもしものことがあってみろ。俺が手前ら全員ぶっ殺してやる」

一段と低い声でそう告げ、踵を返す。
数歩歩いて、その足が止まった。

「柚杏、手前で手前を憐れむなよ」

彼は振り返らないままそう云うと、「チッ、気持ち悪ぃ台詞だぜ」とブツクサ云いながら出口に向かっていった。


「娘の様子はどうじゃったか」
「ずっと見てたクセに……」
「はて、何のことか」

しらばくれたのは尾崎紅葉。中原が扉を開けたら其処に居た。
中原は前襟を捲って、素肌に付けていた小型カメラを外した。そして尾崎へ放り投げる。

「どうした(わっぱ)、随分機嫌が悪いではないか」
「嗚呼、最悪ですよ」
「娘はこのまま暫く人質として拘留すると首領からの御達しじゃ」

それより…と意味ありげに目を細める彼女は動作の1つ1つが舞のように優美だ。

「部下の娘の心配をした方が良さそうだのう?」
「2週間前からずっと彼奴の心配ばっかりしてますよ」

尾崎の目が「ほう?」と揶揄うような視線に変わったのを中原は見逃さなかった。
そして、更に小言を云われる前にそそくさと退散した。いくつになってもあの人には敵わない。

自分の執務室へ向かいながら、中原は考えた。
先程聞いた柚杏の台詞を思い出しては眉間に皺を寄せる。

どうすれば彼奴を……Aを護れるのか。

1番単純で1番効果的な方法を彼は知っていた。
だが、先程3日間の休暇をあたえたばかりの部下に伝えるには些か憚られる方法だ。
そんな方法でも、彼女は上司である中原にそう云われればそうする事も彼は知っていた。だからこそ悩んでいる。

偶々通りかかった樋口が思わず「ひっ」と漏らすくらい中原の顔は険しかった。




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ヤマダノオロチ(プロフ) - カンナさん» ちょっと……涙が出そうです……ありがとうございます。お待たせしました(> <) (2020年6月16日 19時) (レス) id: 20ed7c05bd (このIDを非表示/違反報告)
カンナ(プロフ) - 初コメ失礼します。更新楽しみにしていました。おかえりなさい(*´ω`*) (2020年6月16日 18時) (レス) id: 5ade983ea5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆのみ | 作成日時:2019年5月11日 13時

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