きっと其の四十九 ページ49
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中原の予想は両方当たっていた。つまり、半分当たりで半分外れだ。
Aは確かに異能を展開していた。だが、その胸に発信機は無かった。
壊されたからだ。目の前の女に。
真逆、予想した事が2つ同時に起こっているなど中原は思わないだろう。
Aは玉座に腰掛け盤上の彼女を見下ろしていた。彼女もまた、Aを真っ直ぐ見上げている。
桃色の髪を左手でクルクルと弄び、降ろした右手でしっかりと拳銃を握りしめ、彼女が云う。
「流石ポートマフィアね」
「それはどうも。発信機が無かったら死んでたかもしれないけどね」
Aは左胸に空いた穴を一瞥した。
「それで?こんな所に私を閉じ込めてどうするの?」
「今それを考えてる」
「ふーん…でもそんな時間あるの?外は大炎上なのよ?」
「此処は外から完全に隔離されてる。外の影響は一切受けない」
殺す気になればいつでも殺せる。
お互いがお互いに思っていたことだ。
だがAがそうしないのは今の自分が潜入捜査員と理解しているから。
少しでも情報を引き出して、敵の目的を暴く。そこからの判断は上の人間がする事。
暫しの沈黙を破ったのは盤上の女だった。
「考えは纏まったかしら」
カチャリ。拳銃を構える音。
「貴女を殺して狼煙を上げるの。このヨコハマを羊の庭にする為の全面戦争を始める」
「その為にマフィアから引き剥がして付けたシルクを燃やすの?必要な物を必要なだけ貰っておいて」
「いらなくなったら切り捨てるのは、マフィアでも常套手段でしょ」
カチャリ。鎧が踏み出す音。
「よくご存知で」
馬が
いつの間に女の前に15の兵が並んでいた。
「マフィアは全面戦争なんかしない。ただ狼となり、羊を血塗れにするだけ」
Aが右腕をゆっくりと上げると、それを合図に兵士たちが動き出した。
女は発砲するが、鉄の鎧が弾丸を全て跳ね返す。
「チェックメイト」とAが呟けば、黒い影が
然し、いつものように大鎌を担いでいない。
すると女王は女に見向きもせずAに近づいてくる。女どころかAすらも何が起こっているか判らない。
そして女王は腕を広げると、Aを抱き締めた。Aの視界は暗転する。
耳元で女王が囁いた。何度も何度も私を呼んだ。
その声は、泣いていた。
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時