きっと其の四十六 ページ46
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気の利いた返事なんて浮かばなくて、無難に「ありがとう。美味しいお店探しといて」とだけ返した。
それももう4日前の話になる。
5日目にもなれば、多少周囲とも打ち解けられた。
初日に話しかけてくれた彼女と、その仲の良い同僚と共に、今日も昼食を摂っている。
この会社は弁当屋から毎日人数分の弁当が届くようになっている為、事務室内のランチテーブルで3人全く同じ弁当を食べるだけだが、私にとっては億劫に感じた潜入生活の中で唯一の楽しみとなっていた。
「そういえば、結局の所どうなのかしらね」
「……あの噂の話?」
「そうそう」と1人が頷くと「研修中の子の前でする話じゃないんじゃない?」ともう1人が窘める。
どんな噂か判らないが、どんな噂でも話してもらえると研修中の子はすごく助かる。
「えっ、どういう噂ですか?気になります」
私は何も知らない風に云った。
すると2人は目配せをしてから、目をキョロキョロさせて背を丸めた。
「誰にも云っちゃ駄目よ?」
「ええ、勿論」
口元に手を当てて、内緒話の体勢をとる。
「此処、ポートマフィアって裏の組織と繋がりがあるンだけどね。どうやら最近、別の組織に鞍替えしようとしているらしいの」
もう1人も同じ様にして云う。
「ポートマフィアっていうと、かなり強力な組織じゃない?報復とか荒事に巻き込まれる前に退社しようかって…2人で話しててね」
なるほど。
その"別の組織"とやらが何処か知らないが、
今夜送る報告書にその旨を書けば、夜明け前に事務員内のハッカーを手配して通信網を探ってくれるはずだ。
「何か……ごめんなさいね、こんな話しちゃって。不安よね」
「貴女も気を付けた方が良いわよ。いつ何が起こるか判らないから」
「そうですね。お
本当、いつ何が起こるか判らないから。
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時