【文スト】きっと純愛 (ページ34)

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きっと其の三十四ページ34

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何が起きたのかさっぱりわからなかった。

あの爺さんでさえも目を見開くほどに、眼前で起こった現象は理解し難い代物だったのだ。

突然敵の異能力者が俺と銀の間をすり抜ける。振り返ると、奴は後方から援護射撃を行っていたAの手元へ吸い込まれ、それを追うように彼女も姿を消した。何の跡形もなく。

状況についていけない脳は考えることを辞め、その場に立ち尽くした。

爺さんや銀、他の同僚たちがいくら辺りを見渡しても、転がっているのは死体ばかり。

前にも同じようなことがあった。
あの廃屋で結局何があったのか詳しくは知らない。Aが俺達に隠し事をしているのだけは判ったが、その疑問をぶつけるだけの勇気は無かった。

ケロッとした顔でノコノコ帰ってきた彼奴に怒ったのは、そんな疑問よりも何よりも心配で心が押し潰れそうになったから。
それは今も同じで、今だって、思うのはただ一つ。

「A、A……!!!」

俺の声に、返事をくれ。

「…何だこれは？」

カチャン、と何処からともなく落ちてきた小さな欠片を広津が拾い上げると、それは鏡の破片だった。
それがたちまち淡く明滅すると、床へうっすらと2人の人影が浮かび、やがて完全な人間体になった。

1人はあの炎遣いの異能力者。もう1人は共に消えた彼女。2人は目を閉じ、力なく床へ横たわっている。

「A…！おい、しっかりしろ！！」
「落ち着け立原、少し静かにしろ」

必死にAへ呼びかける立原に広津が強めの声を放つ。
ハッと肩を上げた立原がAの頭をゆっくり膝へ下ろすと、スースーと規則正しい寝息が聞こえた。
どうやらAは眠っているだけらしい。

ホッとした顔の立原は泣きそうな目をしていた。

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