きっと其の三十三 ページ33
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アリスと別れたAは黒蜥蜴の部屋へと戻っていった。確かこれから任務があったことを思い出したのだ。
いや危なかった。任務放棄するところだった。
「
「ああ、ごめん。一寸ね」
「…何だ?妙に吹っ切れた顔して」
首を傾げる立原を余所に、広津が淡々と説明を始めた。それが終わると各々準備を整え、いよいよ出発だ。
今日の相手には異能力者が1人居るらしい。調べによると、どうやら火を操る物理系の異能のようである。
「……行くぞ」
例によって広津が扉を飛ばし、中へ突入。
Aもいつも通り
その隙間、炎遣いの異能力者に立原と銀が向かって行くのが見えた。
相手は掌から火炎を放ち、中々2人を近づけさせない。拳銃も小刀もある程度の間合いを取られると中々辛い。あの広津さえも近づけずにいた。
ひとしきり片付けたAも遠距離射撃で加勢するが、矢張り当たらない。
「……クソが!」
舌打ちをする立原の横を抜けて、他の黒服たちへ炎が向いた。先に数を減らそうという算段なのか。
成す術もなく焼かれていく同胞たち。削られていく体力。押されていく情勢。
どうすべきか考えを巡らせるAの視線の先へ、割れた鏡の破片が見えた。
無意識にそれを拾い上げると、頭の中へかつての記憶が流れ込んでくる。
……思い出した。あの時、彼__ドジソンから貰った本の題名を。
「…
そう呟いた途端、破片が淡く光を放った。悟ったAは炎遣いを鏡へ写した。思惑通り、奴は鏡の中へ吸い込まれていく。そして自分も。
気が付くと玉座へ腰掛け、チェス盤を見下ろしていた。
其処では炎遣いとチェスの駒と思われる兵士達が対峙していた。此方へ圧倒的に数の利がある。
奇妙な喇叭の合図。何が起きたのか判らず困惑している間に、炎遣いの男は袋叩きにされる。
瀕死の彼を見て、Aは冷たく云った。
「 チェックメイト 」
その言葉と共に黒い影が現れ形を整えていく。それはやがて昔見た黒の女王になって、男の首を無慈悲に刎ねた。
急激な疲れにぼやけていく視界へ抗う事もできず、Aはそのまま意識を手放した。
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時