【文スト】きっと純愛 (ページ25)

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きっと其の二十五ページ25

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目を覚ますと、私は元居た場所＿ヨコハマ某所の廃屋＿に横たわっていた。

身体を起こして真っ暗な周りを見渡しても誰も居ない。光源を求めて携帯端末をポケットから取り出すが、生憎の充電切れだった。

(……手探りで出るしかないか…)

一瞬、此処で一夜を明かすという策も浮かんだが、自分や仲間が葬った屍がその辺に転がり尽くしているのを思い出して即取りやめた。

立ち上がり、1歩ずつゆっくりと踏み出していく。
いくら暗闇に慣れたところで所詮、ヒトの目だ。視界が良ければ10秒で進むところをその倍以上かかってしまう。

文字通りの『一寸先は闇』を味わいながら歩みを進めていると、ついに扉までたどり着いた。

安堵してドアノブへ手を掛けると、向こう側から扉が開かれた。よって、Aの勢いは余り、出会い頭何かに衝突。

ゴスッと何かが額に当たり、それが床へパサリと落下。と同時に誰かによって腕に触れられ、恐ろしい重力が牙を剥いた。

Aは己の現状から反射的にその名を呼んだ。

「なかはら、かんぶ……っ」
「あ？何だお前か」

驚かせンなよ、と重力操作から開放されたAは大きく呼吸を整えた。

「今まで何してた。突然居なくなったから黒蜥蜴が大わらわだったぞ」
「…笑わないって約束してくれますか」
「は？おお、いいけど」
「不思議の国へ…行ってました……」
「へえ、不思議の国ね」

むにっと頬に走る衝撃。
中原がAの頬を抓り、引っ張った。地味に痛い。

「手前、俺をおちょくってンのか？あ？」
「痛い痛い痛い、おちょくってません…!!」
「今日の標的に異能力者は居なかったンだろ？」
「ええ、そうです。自分でも何が何だか判らなくて……ぇええ痛い…」
「………」
「あだぁっ?!」

最終的に中原の手は意図的に頬から滑り離れ、その際に今までで1番鈍く痛い衝撃が走った。
洗濯ばさみを引き取られたのと同じ感じに痛い。

少し涙目になったAがそれを拭っていると、中原がジッと自分の顔を見ているのに気付いた。月明かりの効果で更に綺麗に見えるのに、この至近距離で見つめるのは辞めてほしい。

ついに耐えきれなくなったAが顔を逸したとき、ふと中原が呟くように云った。

「お前、綺麗な目してるな」

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