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きっと其の十六 ページ16

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「へえ、またそりゃ随分な考察だな、梶井」
「考察自体はAちゃんがしたンだけどね!」
「そうなのか?」
「ええ…まァ……」

莫迦だとか餓鬼だとか思われただろうか。
今頃になって『敵は死霊魔術師(ネクロマンサー)』なんて考察が恥ずかしくなってきて、思わず俯く。

「なかなか面白(おもしれ)えじゃねえか。その発想は無かったぜ」

その言葉に顔を上げると、ニィと口の端を上げた中原幹部が真っすぐ此方を見ていた。

「だが、どうする?大方手前は梶井に連れて来られただけだろ」
「そんな私が無理矢理連れて来たみたいな云い方!」

事実でしょうが。

「事実だろうが」

私が思った事を幹部がそのまま口にした。

確かに私は個人的に考察をしただけで、この任務に応りたいわけではないが、幹部と共になら話は別……?

「……幹部がよろしいのならば、是非」
「莫迦、よろしいから訊いたンだよ」


何だか、今日の中原幹部はよく笑う。
別に普段から無愛想な人ではないが、そう感じた。

「俺ら3人居るなら、他は無駄に引き連れてく必要()ェな」
「檸檬爆弾は遣っても……?」
「場所は考えろよ」
「御意!」

そうと決まればと云わんばかりに、トントン拍子で話が進んでいく。

例の襲撃事件は2日おきに起こっており、最後の襲撃が2日前。恐らく今日の夜に次の襲撃が来る。
中原幹部も元々今夜手を下すと決めていたらしく、私達では知り得なかった細かな情報を教えてくれた。

今夜に備えていた幹部の部下たちには申し訳無いが、この前訓練を見た見返りと云う事にしといてほしいと思う。

「今夜、赤煉瓦倉庫の近くにある証券会社で取引がある」
「っていう(デマ)を流した?」
「嗚呼、そうだ」
「てことは、犯人が誰か判っていると?」
「いや、そこまでは行ってねえ」
「なら、他の組織が来る可能性もあるのでは?」
「それはないですね」

梶井さんの意見へ否定を示すと、「わかるか」と幹部が此方を見る。

「この襲撃事件は他の組織にも知れている筈。今マフィアに変に手出しして襲撃犯となるのも、襲撃犯と共に死ぬのも、恐れる他ないでしょう」
「ほほう、なるほど」
「本当、何で手前は十人長ですらねえんだか」


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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時

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