××回目の[ノーマン] ページ2
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「おめでとう、ノーマン」
嬉しそうに笑うママに目を背ける。
彼女のなんでもないようなその笑顔が私は大嫌いだった。
足を折られ痛みに唸りながら蹲るエマと、突然の出荷を告げられ呆然とするノーマン。
駆けつけてきたレイたちは状況判断だけで精一杯という様子。
私は情けなく立ち尽くすだけだった。
“また”──だめだった。
今回は今までと違うことをやってきたつもりだったし、私の行動は確かに実を結んでいたはずだ。
これで終わらせようと思っていた。
これでようやく終わると思っていた。
思っていたんだ。
「なんで……」
今……今、ここからどうすればいい？
思えば今日は今までと何ら変わらない日だった。どうして気づかなかったんだろう？
油断していた。この理不尽な呪いが解かれることばかり目先にあって、肝心なことを忘れてしまっていたんだ。
私はずっと、ノーマンを死なせないために繰り返してきたのに。
「……ママ」
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11歳。私の誕生日で、コニーがハウスを出ていく日の夜のことだった。
このハウスは農園で、私たちは食料で、ママは鬼に私たちを出荷しているという事実を知ることになった。
はじめて見た鬼の容姿は残酷だった。
私やみんなに優しい笑顔を向けていたママの冷酷な表情や声がショックだったのをよく覚えている。
それから一緒にその事実を知ったエマとノーマン、そしてレイを加えて脱獄のため4人で密かに動き出した。
ノーマンの出荷──それは突然告げられた。
どこで何を間違えたのかわからなくて、みんなでここを出るという約束が果たせない事実を信じたくなくて。
今思えばそのときからだったと思う。
散々泣いた翌日、私はみんなに笑顔で誕生日を祝われたのだった。
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「私がノーマンの代わりになるよ。ね、いいでしょ？」
私はこの場に似つかわしくない満面の笑みをママに浮かべる。
自分にとって大した得があるわけでもないのに、私はノーマンを救うことにひどく執着していた。
私の心にあるのは、彼が鬼の食料として差し出され望まない死を迎えてしまうのが嫌だという気持ちだけ。
救うためなら何度だって繰り返してやるし、何回だって祝われる覚悟だ。
ノーマンに生きる道ができるだけでいい。
私にはきっとこれからも、彼しかいないのだと思う。
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〈互いに想い合っていた話〉
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作者名：月ノ瀬 | 作成日時：2019年6月8日 0時
