愛のない世界【T】

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Prrrrr……









「……めずらし」






彼に電話をかけるのはこれで２度目

私から彼を呼び出すことは滅多にない

だけど、今日だけはどうしても彼に抱かれたかった

素直に気持ちを伝えてくる北山さんから
逃げる理由が欲しかった

私は誰かから本気で愛されていい人じゃないんだと

こんなに汚い女なんだって








『たまにはいいでしょ、付き合ってよ』




「……じゃー、ホテル予約するから後で部屋番号メールするわ」





『よろしく』







こうして、メールに書いてある
ホテルの部屋に向かった







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「……随分お早いご到着で」




『もう黙って…』






そう言って自分からキスを仕掛ける

いつもならすぐにシてくれるのに
今日は彼が手を出してこない







『……なに、今日そんな気分じゃなかった？』




「それ、俺じゃなくてAじゃない？」




『え？』




「……泣いてるよ」




泣いてる……？

私が？






「心が泣いてる」




『……な、何言ってんの』




「おいで」







そう言って、私を優しく抱きしめる

いつもはすることだけして終わり

私たちに癒しはないはず

なのに、なんで……？

私にこれ以上、情をかけないで







そんな気持ちとは裏腹に
裕太の胸は想像以上に落ち着いて
気づいたら私は夢の中へ






"無理しすぎなんだよ……"








そんな声が聞こえた気がした







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当たり前だけど、朝目覚めると裕太の姿はなかった

久しぶりにゆっくり寝れた気がする

主演というプレッシャーや
結城さんからのしつこいアプローチに
相当なストレスがかかっていたみたいだ

それと……

北山さんっていう問題もまた一つ増えた

本当に素直に受け取っていいものなのだろうか

人を信じれない私にとって
意外にも一番大きな問題だったりする

なんでこんなひねくれた人間になってしまったのか

それは
私の出生に答えがある









"Vous n'êtes pas nécessaire"
(あんたなんかいらない)







こう言われて育てられてきたんだから






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