愛のない世界【T】

01 ページ2

．




「エランちゃん、もうちょいこっち向いてー」






ｶｼｬ ｶｼｬ






「んー、おっけー！じゃあ、撮影以上です」




『お疲れ様でした』






ここは某雑誌の専属撮影スタジオ

私、エランこと佐野Aはモデルをしている

フランスと日本のハーフで19歳の時、日本に帰国してきた

帰国と同時に芸能界デビュー

今年でもう5年目になる

正直、容姿には自信があったし猫を被るなんてお手のもの

怖いくらいトントン拍子に売れていった

いい子ちゃんぶるのも疲れたけど、誰も私の本性なんて知らなくていい

私は誰のことも頼らない






Prrrrr…






『もしもし？』




「Bonjour.(こんにちは)」




『……ばかにしてんの？』




「おー、怖」




『で、なに？』




「今日22:00にいつものとこね」




『……少しは私の予定も聞きなよ』




「203号室だから」






ﾌﾞﾁｯ






……

彼は所謂アレな関係なわけで、かれこれ2年続いてる

たぶん、私の本性を知ってるのは彼ぐらいだ

めんどくさいとは思いつつも普段のストレスを彼に吐き出すために指定された場所へ向かう

と、その前にマネージャーに引き止められた






「エランちゃん、明日のバラエティー大丈夫？」




『え？なんのお仕事でしたっけ？』




「もー、しっかりして！笑
明日は13:00からフジで収録だよ？」




『えっと……』




「キスマイBUSAIKU!?よ！」






そういうことか……






『ごめんなさい、ありがとうございます笑』




「しっかり休んでね！お疲れ様」






だから彼は今日、私を呼んだのね

……やっぱり変な人

時間ないし急いで行かなくちゃ






．

02→←prologue

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す