偽りの人生 1 リヴァイ兵長夢 (ページ17)

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悲しみページ17

リヴァイside

Aが顔を上げた。

そこには満面の笑みは…なかった。

いつも通りの無表情だが、紫の瞳は青みがかっている。

「笑うってなんだ？」

その言葉に皆が驚愕する。

「小さい頃は無邪気に笑っていたかもしれない。1、2歳くらいの頃なら。だが、私は20年以上笑っていない。ただ口角を上げるだけの行動しかしてこなかった。そもそも私は笑えるのか？私には…感情がないのか？」

Aの瞳は綺麗な水色に変わっていた。

だが、その瞳には強い悲しみがあった。

俺は弱いAを見られて良かったと思った。

「この気持ちは何なんだ？なんでこんなに苦しいんだ？私はおかしくなったのか？」

俺は思った。

Aにもちゃんと感情があったのだと。

もともとあったが、こういう感情はないに等しかった。

「A、それは、悲しみだと思うよ？」

クソメガネが優しく諭す。

「悲しみって何なんだよ！」

Aは叫んだ。

その目から涙が一粒落ちた。

「なんなんだよ！この液体は！なんなんだよ！」

Aは泣き叫んだ。

「A、それは涙だよ。悲しい時とか嬉しい時とか、感極まった時に出るものだよ」

クソメガネが言っても理解していないようで、まだ泣き叫んでいる。

俺はAのこんな姿を見たことがなく、場違いにも新鮮で見られて良かったなどと思ってしまった。

おそらく自分の過去について語ることで肩の荷が降りて感情が溢れ出てきたのだろう。

「なんなんだよ！私はおかしくなったのか？誰か…教えてくれ…なんなんだよ！」

Aは近くにいたエルヴィンの腕にしがみついて泣き出した。

エルヴィンは驚いたようだったが背中をさすり始める。

Aの泣いているところは綺麗で、守ってやりたいと思った。

Aはとても儚げで今にも散ってしまいそうだった。

俺はエルヴィンに嫉妬した。

嫉妬した…？

あぁ、俺はやっと気付いた。

俺はAのことが好きなんだ。

だが今Aをエルヴィンから引っぺがしてどうする？

どうにもならないじゃないか？

顔を埋めてないだけましだ。

「うっ、うぅ…なん…なん…だよ…」

Aはだいぶ落ち着いてきたようでエルヴィンの腕を離す。

そして目をこする。

泣き叫んでいた割に鼻水は全く出ておらず、泣き顔も綺麗だった。

「ごめん…な。迷惑をかけた。すまない…」

Aはエルヴィンから離れ、皆の前に立った。