緑の瞳と青い瞳 ページ17
ワルキューレに入る事が決まってから、数週間が経ち、私達のファーストライブに向けて猛練習の日々を送っていた。
ワルキューレはアイドルだ。アイドルというものは、かわいい女の子や男の子がただ集まって歌って踊るだけ、という簡単な話ではない。
ファンの人々が見ていないところで血が滲むような努力をしている。みんなが喜ぶように、感動するように精一杯自分を磨く。
ワルキューレは救いの女神だ。原因の分からないこのヴァールシンドロームを鎮める唯一の歌だ。ヴァールで命を落とす人がいないように、苦しむ人がいないように、彼女達は歌を響かせる。
だから、この程度では駄目だった。
「ひゃあ!」
「フレイア!集中!」
雨の中、泥の中にフレイアが転んでしまった。顔には泥が付いてしまった。
ワルキューレのメンバーには腰に紐が着けられ、タイヤが引き摺られている。
「あとちょっとだよ!頑張れ!」
「………………」
カナメとマキナはフレイアに声をかけるが、レイナは見つめたままだった。
美雲は見向きもせずまっすぐ進んでいく。
「マステラ!行くよ!」
残りのメンバー、マステラは5人のずっと後ろを必死に食らいついている。
「はァッ、は、ッ、…!!はっ、はい……ッ!!」
(速い………!全く追いつけない!レベルが…全然違う…!)
マステラの顔も泥だらけだった。口もジャリジャリ音がする。
「ぐうっ………う、んッ……!!」
必死に足を動かし、ずりずりと進んでいく。
「行くよ!歌は!」
「命!」
「歌は!」
「愛!」
「歌は!」
「希望!」
「歌は!」
「神秘!」
「歌は!!」
カナメの掛け声にフレイアは歯を食いしばる。
「ッ元気!!」
「歌は!!」
カナメの掛け声にマステラは大きく息を吸う。
「未来!!!」
「お疲れ様、2人とも」
カナメはシャワーを浴びた2人に声を掛けた。
「お疲れ様です!」
「明日はリズム中心のメニューで行くわ。よろしくね。」
「はい!頑張ります!」
「頑張りますッ!」
カナメは2人に手を振って別れた。
「……………わあぁ〜〜………ぶっちゃ疲れた………」
「………お疲れ様です、これ」
「え?あ!あんがと…」
マステラはフレイアにりんごジュースを差し入れた。
フレイアはそれを一気に飲み干す。
「んごりごり〜〜……おいし〜〜………」
空気が一気に抜けたように、ほにゃほにゃとフレイアが座り込む。
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作者名:ちゃまろ。 | 作成日時:2020年3月11日 0時