お前の彼氏、浮気しとったで。２ ページ3
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｢A｣
そう、北から名前を呼ばれたのはお風呂上がりのとき。
北が私の事を名前で呼ぶなんて珍しいなぁ、なんて思って彼の方を振り向いた。
｢なに？｣
｢今から、少し話せるか？
昼の続き｣
それを聞いて、�爐△了��瓩�、と納得する。
｢分かった｣とだけ返して、一緒に部屋に戻っていた谷地ちゃんには謝って、先に帰って貰った。
｢ほんなら、ちょっと向こう行こか｣
｢ん、分かった｣
そう言われて、連れてこられたのは人通りが少ない第3体育館近くのベンチ。こんなとこあったんやなぁ、なんて思いながらベンチに腰を掛ける。
｢あのな、昼の話やけど、多分北の勘違いやと思うよ。
侑とかから騙されたんやない？｣
北が口を開く前に先手を打ってそう言ったものの、彼の目は少しも揺らがず真っ直ぐで。そんな彼の瞳は、私の胸をザワつかせた。
｢証拠はあるで｣
｢え、｣
思わず、抜けた声を出す。
今まで、嘘や嘘や、と思っとったモノに。
証拠があるなんて言われたら、流石に平常心で居られない。
頭ん中で、ぐるぐると考えている内に、彼はスマホを取り出していた。
北に現代機器なんか似合わんな、なんていつもなら笑いながら茶化すものの。今は、そんな言葉も口に出せない。
少し、息が苦しくなったのを感じる。
｢まあ、Aが見たないって言うんやったら無理には見せへんけど｣
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そうしてまた、北のまあるい瞳に捉えられる。
そんな聞き方、狡いやん。
見たくないけど、そんなの。
｢…見る｣
って、言うしかないやん。
その言葉に北はこくりと頷くと、少しの躊躇いもなくスマホをいじり始めて。
数秒後、ある写真を見せられた。
そこには、私の大好きな彼氏、赤葦の姿と。
私の、少しも知らない女の子の姿があった。制服から見るに、多分梟谷の生徒やろう。
しかも、2人がただ並んで写っとったわけやなくて。
手を、繋いでた。
辛うじて、恋人繋ぎでは無いけど。正直、どっちでも変わらへん。
｢…っ、｣
声が、出えへんかった。
｢他にも、もうちょいキツいのあるけど｣
そんな声に、ゴクリと唾を飲んだ。
もう、嫌や。見たくない、って思った。
｢…俺、別にAのこと傷付けたいわけやないから、もう嫌なら見せへんけど｣
｢…うん、もう、いい｣
私は声を振り絞って、そう言った。
膝の上に置いとる手は無意識に震えてて。
気付いたら、ぽたぽたと瞳から沢山の涙が溢れて来とった。
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作者名：ヒマリ | 作成日時：2020年5月10日 23時
