君にはミルクティーがよく似合う。１［山口］ ページ15
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__ 私は今年、念願の烏野高校への入学を果たした。
｢〇〇中学から来ました、山口忠です｣
そんな、柔らかい声に顔を後ろに向ける。
今日は入学式、そして、クラス発表。
入学式が終わると、私達新1年生は新しい教室に案内され。先生に促され、こうやって自己紹介をする羽目になっていた。
面倒臭いし、正直あんまり他の人の自己紹介も興味は無かったのだけれど。
彼だけは違った。
｢えっと、中学ではバレーをやってたので。高校も部活はバレー部に入ろうと思ってます｣
そんな風に、柔らかい口調で喋る彼に。
心臓が、ドクンと高鳴った。
｢あとー、好きな食べ物は…ポテト、ですね｣
少しの間のあと、ふわりと微笑んだ彼。
…ポテト、って。
…どストライク。
私の中のもう1人の私が、今年1番の声で叫んでいる。
彼が、好きだと。
山口君は、自己紹介を終えるとスっと席に座った。
その姿すら、何故だかとても綺麗に見えて。彼から目を離しても、心臓の鼓動は高鳴るばかりだった。
…顔が、熱い。
｢よーし！じゃあ、これで全員の自己紹介が終わったなー！｣
担任の先生がそう言っているが、もう正直あんまり頭に入ってこない。
私の脳内は、山口君のことでいっぱいだった。
…私の自己紹介、最初の方でよかった。
彼のあとだったら、絶対絶対、何も言えなかった。
…って言うか、もう、自分の時に何を言ったかさえ思い出せない。
そっと、頬に手を当てると。
凄く凄く、熱くて。熱があるのかと、思ったほどだ。
�牋賁楾�れ�瓩辰討いΔ里蓮�多分小悪魔の仕業だ。
だって、なんの予兆もなく、突然何処からか落ちてきて。
こんな風に誰かの心を、どうしようも無いくらいめちゃくちゃに、かき乱していくのだから。
▪
｢ツッキー！部活行こ！｣
___ 入学式から、約ひと月が経った。
大分、周りの人達も新しい環境に慣れてきて。
私も勿論、そこそこ話す友達は出来た、けど。
山口君との進展は、全くと言っていいほど無い。
そもそも、彼と話したのも、多分両手で数えられる程度。
そりゃ、そうだ。
私は典型的な大人しめタイプ。
彼みたいに、明るくて、誰にでも好かれるような人。
私なんかが、独り占め出来るはずもない。
｢またそれ飲んでるの…｣
｢うんっ、美味しいよ？｣
月島君と並んで歩く彼の手には、彼にお似合いの可愛いらしい飲み物。
パックのミルクティー。
そんな彼を、私は今日も。
遠くから見つめているだけ。
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作者名：ヒマリ | 作成日時：2020年5月10日 23時
