漆拾弐 ページ25
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ドアを出来るだけ音を立てないように開けて教務室に入って真っ先に視界に飛び込んだのは目立ちやすい白い髪の毛だった。複雑な気持ちと、最後に会えてよかったという気持ちが入り交じってなんだか変な感じがする。
五条先生の方を出来る限り見ないように自分の席に向かい、椅子に座る。元々任務に専念する事になった時大体の持ち物は持って帰っていたため荷物は手提げ2つ程で足りる量だった。
早くまとめて帰ってしまおうと机周りのものや引き出しの中身を袋に適当に詰め込んでいる時だった。
視線を感じてつい顔を上げたせいでこちらを見ていた五条先生の視線とかち合ってしまう。しまったと思ったがこのまま不自然に逸らすと余計に変な感じになってしまうと思いなにか言おうとしたが何を言えばいいか分からず口をぱくぱくさせるだけになってしまった。
「何しに来たの?片付け?」
『え、あ…いや。荷物をまとめに来たんです』
「…なんで?」
『高専を辞めるので荷物をまとめに来たんです。ゴソゴソしてすみません、うるさかったですよね。すぐ帰りますから』
「……は?やめるってマジ?まさか呪術師まで辞めるとか言わないよね?」
『辞めますよ』
五条先生の方を見ずに手当り次第机周りの物を袋に入れる。五条先生の口調は段々とキツくなっていて、意図せず身体が縮こまる。
書類をまとめながら五条先生からの呪術師を辞めるのかという問い掛けを肯定すると、明らかに空気がピリついた。
「万年人手不足なのに何考えてんの?………ああ、もしかしてその腹が原因?ついに禅院のオッサンと子供作ったんだ?」
『…そんなところです』
「家の言いなりでよくやるねぇ。僕なら知らない人間と子作りなんて絶対無理。オマエ、やっすい女だね。恥ずかしくないの?まあでもお前とするよりは知らない人間とした方がマシかも。腹の子も親の義務で作られたって不幸なもんだね」
嘲笑混じりに言われて、まさかここまで言われるとは思っていなかったせいか目の前が眩んだ。
五条先生の言う通りだ。お腹の子は幸せになれない。父親も知らず、母親は自分を産んだ後死んでしまうなんて、不幸以外の何物でもない。
手を当てると、お腹の中から蹴られた感覚が手のひらに伝わる。
たとえこの子のその先にあるのが不幸かもしれなくても、私は五条先生との新しい命を無くす事は出来ないと心の中でお腹の子に謝った。
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ayee(プロフ) - もう続き書かないんですか?とてもいい話ですっごく更新するのずっと楽しみに待ってます!(^^) 完結してほしいです❤ (2022年7月25日 8時) (レス) id: 3db7910b34 (このIDを非表示/違反報告)
ことせ - すっっっごく好きです!! 更新楽しみにしています!!(о´∀`о) (2021年4月30日 21時) (レス) id: da726518e4 (このIDを非表示/違反報告)
ととろ - とっても面白いです! (2021年2月11日 17時) (レス) id: 82c0f25e2d (このIDを非表示/違反報告)
エナ - コメント失礼します!もう、面白いし、切ないしで…涙が止まりません(´;ω;`)更新頑張ってください! (2021年1月20日 19時) (レス) id: bf74a846b3 (このIDを非表示/違反報告)
浅野真衣子(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます^ ^ 更新楽しみにしてます! (2021年1月14日 22時) (レス) id: feccae67c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんのんたると | 作成日時:2020年12月5日 1時