一欠片の愛をPart2【五条悟】

陸拾伍 ページ18

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泣きすぎたせいか、はたまた泣いている途中に擦りすぎたせいか。じんじんと痛む瞼をハンカチで押さえながら、資料の続きに目を通す。本当は家に帰ってやりたかったが、持ち出し禁止の資料だったので仕方なく教務室重い腰を教務室のデスクに降ろしているのだ。



今日は早く帰ってすぐ寝よう。今日のことはもう早く忘れてしまおう。



そう考えながら、頭の中でチラつく相澤さんを必死に消した。





「おい。さっき、なんでアイツのこと叩いた？」


『…っ、五条先生、いたんですか』


「質問に答えろよ」


『それは、…あの人が、呪術師をバカにしたからです』


「それだけで叩いたのか？最悪だな」




本当はバカにされた訳ではなかったが、咄嗟につらつらと嘘をついた。




『…申し訳ありません。五条先生の婚約者の方を傷付けてしまって。本当にごめんなさい』



「あと、アイツからお前が僕のこと好きだって聞いたんだけど、まじで迷惑だし気持ち悪いからやめてくんないかな？困るんだよね」



『…好きじゃないから安心してください、私は五条先生の事は好きじゃないです』





一言一言を噛み締めるように言った。



私は五条先生のことを好きじゃない。




心の中で好きでいることすら許されないならば、もう好きではないと言い聞かせる他なかった。




私は五条先生ことなんて好きじゃない。


前に私に向けてくれていた優しい笑顔も、包み込むような優しさも、柔らかな雰囲気も、温かくて大きな手も、美しい瞳も、全部。




『好きなんかじゃないです』




もう一度、強く繰り返した。



心の中で唯一大切にしていた気持ちすら手放したというのに、私は存外冷静だった。





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