ねえさんが二十八人 ページ32
_机に置かれたいちにいのスマホから、けたたましいくらいの着信音が鳴り響いた。
失礼ながらその画面を見る。 『乱数』。
いちにいはねえさんが帰ってから傷心気味で、仕事以外はぐでーっと溶けている。
あの低脳は仲間に「失恋でもしたのか?」と当たらずも遠からずな質問に涙ながらに「失恋してねぇわ! まだ……」と自信なさげに呟いていたのが記憶に新しい。
緑の応答ボタンをタップし、スマホを拝借する。
「もしもし、どうしました?」
『あっれー? 三郎? 一郎はどこー?』
「いちにいはただいま仮眠中ですので。 伝言があれば伝えておきますよ」
『起こすっていう選択肢はなしー?』
なしに決まってます、と言えば彼は電話越しでも分かるくらいおかしそうに、『そっかぁ』と笑っていた。
と、同時に僕のスマホからも着信音が鳴った。
画面を見ると『ねえさん』の文字が……!
「おおっ! ちょっと失礼しますね」
飴村乱数に断りを入れ、応答する。
「もしもし、ねえさん?」と問いかければ『そうだよ。 今平気?』と返ってきた。
「もちろんです! どうしたんですか?」
急いでいちにいの部屋に向かいながら電話で話す。
コンコンとノックすると「あぁ……?」と、返事が聞こえてくる。
「失礼しますね、ねえさんと飴村乱数から電話が来てまして……」
「ねーちゃんから!?」
ガバッと跳ね起きたいちにいにも聴こえるように、「スピーカーモードにしてもいいですか?」と訊くと、もちろんと返ってくる。
ねえさんと電話するのは好きだ。
まるで耳元で囁かれているようなじれったさが心地よい。
『一郎ごめんね? 寝てた?』
「え、ああ……、ちょうど起きたとこだよ」
『ほんとに? 一郎昔っから私が帰った後ふて寝しちゃうじゃん?』
ふふっ、と笑うその柔らかいその声からは、愛おしさが滲んでいる。
バレてた、と顔を赤らめるいちにいは少し新鮮で。
ねーちゃんがいねぇと寂しいからな、と素直に甘えられるいちにいが少し羨ましい。
『あー! ちょっとAの声聞こえるー!』
飴村乱数の方もスピーカーにし、四人中二人が電話という少し奇妙な光景。
とりあえず本題に入ることになり、ねえさんから話を進める。
_結局二人とも似た内容だったが、ねえさんの声が聞けたので満足だ。
飴村乱数には「絶対に全員で来てねー!」と釘を刺されたが、なんだろうか。
とはいえ、ねえさんのウェディングドレス姿を婚約者より先に見れるのは、結構気分が良かった。
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おりはるこん(改名)(プロフ) - ミーさん» コメ返し遅れて申し訳ないです!最近やることが多いので更新事態の優先順位が低くなってるのがすごく悔しくて…。終わりは決まってるので着いてきていただけると嬉しいです! (2018年11月29日 20時) (レス) id: ea4c86eaca (このIDを非表示/違反報告)
ミー(プロフ) - 最近読み始めたので、更新とても嬉しいです…!これからも頑張ってください! (2018年11月9日 20時) (携帯から) (レス) id: 750b1e0df3 (このIDを非表示/違反報告)
おりはるこん(改名)(プロフ) - ぬぬぬさん» ここだと文字数が足りないのでボードかメッセージに移行してもよろしいでしょうか?私の考察は250文字以上になってしまいそうなので…(汗) (2018年9月15日 18時) (レス) id: ea4c86eaca (このIDを非表示/違反報告)
ぬぬぬ(プロフ) - ペンは剣よりヒプノシスマイクってどういう意味だと思いますか???調べても全然分からなくて… (2018年9月15日 17時) (レス) id: 62aeac2e51 (このIDを非表示/違反報告)
おりはるこん(改名)(プロフ) - ぬぬぬさん» わかりみが深い…!久々にヒプマイを誰かと語れてスッキリしました!ぽっせもわかります!ヒプマイ沼は深いですね…! (2018年9月15日 17時) (レス) id: ea4c86eaca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おりはるこん(元鈴音) | 作者ホームページ:なし
作成日時:2018年8月26日 8時