《悲報》姉さんが嫁入りしちゃう…！【ヒプノシスマイク】

姉ちゃんが十八人 ページ22

「姉ちゃん、大丈夫。 今三郎が飲み物淹れてっから」

「うん……ごめんね、取り乱しちゃって」


　すっかり落ち着いて見えるが、まだひぐひぐとしゃくりをあげてる。
　目の周りは真っ赤に腫れている。 婚約者許さねえ。


「はい、ねえさん」


　はちみつ入りの、ホットミルク。
　少し冷ましたそれは、猫舌の俺にもちょうど良く飲めた。
　三郎の目は「余っただけ」と強く書いてあったが、そんなのに構っていられる余裕はない。

　あの姉ちゃんが、こんなに目を腫らして、子供のように泣いてたんだから。


「……二人は、結婚願望って、ある？」


　その問に、黙って頷く。
　出来ることなら姉ちゃんと、なんて、口が裂けても言えない。
　いや、今こそ言うべきなのかもしれなかった。

　姉ちゃんは薄く笑みを浮かべながら、「そっか」と呟いた。
　続けて、「二人とも、いい旦那さんになりそうだね」とも。


「私はね、なかったの。 お母さんの仕事を、補佐して、たまに、こうして……お泊まりに来て」


　姉ちゃんが、また、震えてる。
　ホットミルクを支える手に手を添えると、姉ちゃんは嬉しそうに微笑む。


「……一郎と出かけるのも、二郎が美味しいってご飯食べてくれるのも、三郎とゲームするのも、全部好きなの」


　それこそ、結婚なんて不必要になるくらいに。
　姉ちゃんは、くすっと肩を揺らす。
　そんた自嘲的な笑い方する姉ちゃんを、俺は知らない。
　知らなくて当然だ。 俺らはそんな顔『させた』ことなんて一度もないんだから。

　俺と三郎と、あの兄ちゃんとでさえ、共通してると断言出来るとこが一つだけある。
　姉ちゃんが、『そういう意味で好き』ということ。
　だから、という訳では無いけど。


「姉ちゃん。 俺らは何があっても、絶ッッッ対、姉ちゃんのこと嫌いにならないから」

「っ！ そうですよ、ねえさん。 絶対、今も昔も、これからも、絶対ねえさんのこと、好きですから」


　姉ちゃんが笑顔になるなら、報われなくたっていい。
　両サイドから姉ちゃんを抱き締める。
　姉ちゃんは、苦しそうに「ちょっと……！ もー！」と言っていた。
　でも少し明るいその声色に、心の底から安堵する。

　ああ、やっぱり姉ちゃんは笑ってる方が可愛い、と。

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