《悲報》姉さんが嫁入りしちゃう…！【ヒプノシスマイク】

姉ちゃんが五人 ページ9

＿「あ、おはよー、二郎」

「はよー」


　基本的に早起きは苦手だけど、姉ちゃんが来た時は頑張って起きる。
　姉ちゃんは料理が好きだから、毎回朝飯を作る。 その後ろ姿を見るのが好き。

　もし家庭に入ったらこんな感じなのかな、なんて。

「ッわぁぁぁ！！！！」

「えっ！？ そんなお腹空いた？」

「ごめん、ちょっと考え事してた」


　何考えてんだ、俺。
　姉ちゃんはくすっと小さく笑いながら、早く作るねと言った。
　はずい、熱い、穴があったら入りたい。 そのまま三郎に埋められそうだけど。

　姉ちゃんは朝飯は和食派だ。
　パンも好きだけど、朝は白米を食べたいらしい。

　四角いフライパンを使わずに厚焼き玉子を作る器用っぷりは健在。
　甘くてふわふわで、少し和風味の効いた、姉ちゃんの玉子焼き。

「二郎、あーん」

　焼き終わり切り分けたのか、その手には卵焼きの切れ端。
　一瞬女神に見えたが、「熱いから速く」という言葉で我に返り、かぶりつく。

　手づかみだったから、ちょっとだけ姉ちゃんの指が唇に触れる。
　姉ちゃんも切れ端をつまみ上げ、ぱくんと食べた。
　そのついでと言わんばかりに指先をぺろっと舐める。 わ、わぁ……！


「ん？ 二郎、顔赤いよ？」


　美味しくなかった？ と不安そうな顔をする姉ちゃん。
　全く気にしてない。 昔からしてたことだし、今さら気にする俺の方がおかしいんだけど……。

「……いや、めっちゃ、うまい……っす……」


　端っこの方は少し半熟になっててとろとろで、お菓子みたいになってる。
　真面目くんな三郎には悪いが、普段不健全な生活を送っていた俺が早起きした俺への、神様からのプレゼントだと思ってる。
　美味しいし、姉ちゃん可愛いし。

「よかった」

　一郎と三郎には内緒ね、と人差し指を唇に立てる姉ちゃん。
　おちゃめに片目をぱちりと瞑って見せる姿は、まるでラノベの魅力的なヒロイン。

　早起きは三文の徳というが、この徳は三十億くらい(？)あると思う。

「二郎、お茶碗取ってー」

　そのくらいお安い御用だ。
　姉ちゃんを独り占めできて、あーんしてもらえて、姉ちゃんは気にしてないけどたまたま間接、キス……できて。
　あまりに不釣り合いで、少し怖くなる。
　幸せが怖いなんて、生意気だろうか。

「はい」

「ありがと」

　お茶碗を渡すと、姉ちゃんは炊飯器の横にとん、と置く。
　姉ちゃんが可愛い！ と一目惚れした食器。
　他にもこの家には、姉ちゃんが関係してるものがいくつもあるのだ。

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