《悲報》姉さんが嫁入りしちゃう…！【ヒプノシスマイク】

オネーさんがさんじゅーさんにん ページ37

「……だから、三人に甘えたまま、違う男性と結婚しようとしたの」


　誰か一人を選べないAは、優しいのか臆病なのか。
　やろうとしてることは酷く残酷で、でもキッパリと振ることは出来ないから。

　ただただ求めるだけの三人とは違う立場からの、明確な好意。
　素直に好きと言えない少女は、思春期の女の子みたいでとても可愛らしい。
　幻太郎なんかは、喜んで題材にするだろうか。 ひどい嘘で塗り固めたラストになりそうだけど。


「ま、何にせよ、今日の撮影は楽しめばいいんじゃない？ 今だけは、三人の花嫁としてさー」

「……」

「Aが思ってるよりも、あの三人はAのこと好きだと思うよー」


　我ながらなんとも無責任な発言だ。
　ボクもAは好きだったけど、あの三人に固められては到底手が届かない。 それに、あの四人は外野から見ている方がよっぽど面白い。

　お互いに好きなのに、何を戸惑うことがあるんだろう。 好きなものは選ばなくていいじゃん。
　それで、傷つくものができるのなら。


「ねぇ、乱数く」


「それは、ボクに言うこと？」


　すっと近付き、プロのメイクが施された頬を、両手で包んで持ち上げる。
　Aの方が大きいけど、座っているからボクの方が高い。
　ワンテンポ遅れて顔をかあっと赤く染めるA。


「Aは、誰が好き？ ……答えは、その人に言ってね？」


　ぱっと両手を離し、「じゃーボク、一郎達のとこ行ってくるねー」とだけ言って、部屋から逃げ出す。
　あの様子だと、結論は出そうだけど、行動に伴わなそうだ。

　皆、不器用な恋をするんだなーと思う。


「いっちろー！ 準備終わったー？」


　返事も待たず部屋に入ると、これでもかと美形が三人もいる。 うわぁ、目に毒だ。

　一郎はソワソワとして三郎に絶えず「変じゃねぇか？」と訊いてるし、それに対して三郎は「カッコイイですよ！ あの、僕は……？」と鏡のような会話だ。
　対して二郎は、ほんとに鏡を見ながら前髪をいじろうとして、やめて、いじろうとして、やめている。


「あ、乱数！ その……、あんましこういうの慣れてなくてよ……。 変じゃねぇか？」

「いちにいは問題なく似合ってると思います！ ……あの、僕もどうですか？」

「兄ちゃんはなんでも似合うだろ？ ああ、俺こういうのガラじゃねぇと思うんだけど……」


　自信がないらしく、やけに落ち着きがない。
　いつもみたくイキリ散らせよ、と思いながら、ボクは答える。


「知っらなーい！ Aに訊けばー？」

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