甘い乾き

# 海で揺蕩う. ページ7

深海にまで沈んでいた意識に
少しだけ光が差した。



ゴソゴソと曇った音が左から聞こえる。
やがて落ち着いたそれはなぜかあたしに温もりを与えた。
海にいるのに暖かいなんて変だなあ。



｢んー…やまと…｣



海にやまとのすがたはない。
けど、やまとに包まれてる時みたいに暖かい。
どうしてだろう。



もしかして見えてないだけで近くにいる？
そう思ったあたしは自分からも温もりに近づいた。
不思議なことに、足を伸ばしたり手を上げたりすると
その海水は冷たくなった。



まるで暖かい場所の範囲が予め決められてるみたいに。



(……い、)



ん？
何か言ったのやまと。
聞こえないよ。



(……していい？)



もうちょっと大きい声で言ってよ。



(ちゅーしていい？)



また？笑
最近多くなったよね。
酔ってなくても酔っ払ったみたいに、いっぱい。



動画でもあっちゃんにちゅーしてるし、間接的に
あたしあっちゃんともちゅーしてるんだけど笑



まあいいや。
やまとの唇、好きだから。



いいよという意味で小さく頷いた。
優しく重なってきたそれは、やっぱり柔らかい。



けど、何か違った。
上手く言えないけど何か違う。
水の中だから？



これ…やまとの唇？



意識がだんだん光の方へ戻っていく。
完全に海から浮かび上がると同時に、目が開いた。



｢ん…？｣



扉が開く音。
電気をつける音。



目の前には。



『おい……何やってんだよ……









ゆうた！！！』

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