君と見たあの空を (ページ38)

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「映画のオファー、来たっすけど受けますよね？」

移動中の車内、なんとも無しに流れてゆく景色を見ていたらかけられた言葉。

作品の概要を説明して行く石田くんの声に耳を傾ける。

折角いただいた仕事を断れないといつもなら即答するこの質問だけれど

今日はなんだか言葉が出てこなかった。

別に作品の内容が嫌だったわけじゃない。

ただ、なんとなく言葉が出なかっただけ。

何も言わない私。

赤信号で止まった車。

バックミラー越しに目があった。

お互い、何も言わない。

青になってまた走り出す。

なんで言葉が出てこないんだろう？

嫌なのかな？

何が嫌？

仕事が嫌？

そんな事思っていいはずないのにお仕事ができるのは幸せな事なのに。

下積み時代散々苦労してやっと今目が回るほど忙しくなって

今が踏ん張りどころ、弱音なんて吐いちゃダメ。

それなのに……

傲慢な自分の考えに嫌気が差す。

心の中に凄い勢いで濃いモヤがかかって晴れそうになかった。

そんな時、手元で光った携帯電話。

それは一通のメッセージが来た事を知らせてくれる。

【ひま】

そんな二文字の言葉と

ラフな格好をしたメンバーさんが床に寝転がっている写真が添付されていて

思わず口角が上がった。

【ひまなの？】そう聞いてみれば

【振り入れ中だから本当はひまじゃないけど飽きちゃった。応援して】なんて返事が返ってくる。

飽きちゃったの？

あぁ、じゃあこの写真は飽きてみんなで寝転がってる所なのか

なんだか行き倒れているようにも見えるけど

【飽きちゃったの？がんばれー】

要望に応えてそんな返信を送る。

数秒後、例の絶妙な顔をしたおじさんが

グッとポーズをしてキメ顔をしているスタンプが送られてきた。

だからなんなのこのスタンプ、どうやって見つけたのよ

それにどのあたりがメンディーさんなの。

シュールすぎるスタンプがツボにハマって一人で肩を震わせる

側から見たら不審者すぎるこの状況。

石田くんに変な目で見られたら絶対に玲於くんのせいだ。

それでも、玲於くんとやり取りしていたら

いつ間にか黒くてドロドロとしたモヤモヤなんて消え去っていた。

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更新、再開します。