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明け方に目が覚めたら、智はスヤスヤ眠っていた。
少し口が開いていて子どもみたいな寝顔。
「姉として弟を守ってね」
約束守れなかった、な。
智にも私の気持ちきっとばれた。
智はどういうつもりだったんだろう。
興味本位？
私が泣いてたから雰囲気に流されて？
喧嘩した反動？
それとも。
私のこと、少しは好きだって思ってくれた？
起き上がろうとすると、智の腕がきゅっと絡みついてくる。
「ごめん、起こしちゃった？」
「……どこ行くの」
「……」
「ここにいて」
つぶやくようにそう言うと、智はまた静かな寝息を立て始めた。
胸がぎゅうっと苦しくなる。
智の腕の中でもう一度眠りたい気持ちを抑えて、私は布団を抜け出した。
そうっと起こさないように服を着ると、最低限の荷物をカバンにつめる。
ここは、「姉」と「弟」が暮らした家。
もう「姉」には戻れない。
もうこの家には帰れない。
ちょうど良かったのかもしれない。
これから智は、きっともっといろんな人に出会って。
きっともっと広い世界を知る。
あの子の絵の才能があればどこでだって生きて行ける。
このボロい家のことも、口うるさい私のことも、すぐに忘れるよ。
家を出る前にいつもの習慣で仏壇に手を合わせたけど、お母さんの写真は見ることができなかった。
玄関をガラガラ開けると、ぱらぱら小雨が降っていた。
明け方なので、空気は冷んやりしてるけどどことなく春を感じる雨。
築30年のボロい家は、壁にヒビが入っているし、隙間風はぴゅーぴゅー吹くし、大雨が降ると雨漏りまでする。
でもね、私。
智と暮らすこの家が。
智と過ごす何でもない日常が。
本当に大好きだったよ。
すう、と息を吸って歩き出す。
これくらいなら傘はいらないかな。
大丈夫。
悲しくなんかない。
昨日の夜、智は全部を私にくれた。
あの夜を抱きしめて、一生一人で生きていける。
ほっぺたが少し冷たいのは春の雨のせい、だ。
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璃桜(プロフ) - 初めて読ませて頂いた作者の方もいて色んな作風が読めて楽しかったです。ゆったりとした雰囲気が儚くちょっと切なく感じました。またコラボの企画があったら読みたいと思いました！これからも応援しています！ (2016年12月12日 21時) (
レス) id: 18ebc3f5e6 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - reiさんのお話、ぐっときてしまいました。やっと自分の気持ちに気がついたのにすれ違いでもぅ会うコトもままならないなんて。後悔をして愛を知るなんて。悲し過ぎる。甘いお話も好きですがたまに涙して毒気を抜いてます。これからも楽しみにしています！ (2015年9月23日 14時) (レス) id: cc888f66ce (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - つむさんのお話大好きです。泣けてしまいました。また素敵なお話読むの楽しみにしてます！ (2015年9月23日 13時) (レス) id: cc888f66ce (このIDを非表示/違反報告)
かしゆか(プロフ) - この作品面白かったです！ところでつむさんに質問なんですけどパスワード解除したりはしないんですか？ぜひつむさんの作品を見たいのですが･･･ (2015年9月15日 0時) (レス) id: a67ea852ce (このIDを非表示/違反報告)
Ame(プロフ) - 5人の作者様のお話がそれぞれ重なりあってて、すごくおもしろかったです。感動しましたし、お腹いっぱいになりました。また是非このような企画があることを楽しみに待ってます！ (2015年4月23日 0時) (レス) id: 8bdb99006e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：tomyummy
x他3人 | 作者ホームページ：
作成日時：2015年4月2日 23時
