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「え……？」
智が眉間にシワを寄せる。
「もう疲れたの、智の面倒見るの」
「バイト始めたし、おれもちょっとは自立できるようにするよ」
「そういうことじゃなくて」
「じゃあどういうことだよ」
いつも穏やかな智の口調に明らかに怒りが含まれていた。
「智だって、一人で暮らした方が自由でしょ？
将来のことも好きなようにしていいんだよ」
「ルミになんか言われたの」
「ルミちゃん……あの子いい子だね。
智のこと本当に想ってる」
「関係ねえよ」
「私もね？ちょっといいな、って思ってる人いるんだ」
「……え？」
「福祉課の係長。大人だし落ち着いててね。
何度か二人で食事に行ってるんだけど」
「……」
「私ももう26だしね。そろそろ結婚を前提にって」
「本気で言ってんの」
智がまっすぐ私を見る。
「本気、だよ」
智はそれ以上何も言わずに居間を出て行った。
勢いで言ってしまったところはあるけど、きっとこれで良かったんだ。
「姉として」も、そばにいられないなら二人で暮らす意味なんてない。
自分の部屋に行こうとして、紙袋が落ちているのに気づいた。
見慣れた智のきれいな字で「Aへ」と書かれたカードがついている。
「はじめて給料もらったから買ってみた。
もうすぐ春だしね。
いつもありがとう」
中には春らしい水色の小花を散らしたストール。
胸がつまってそのストールを抱きしめる。
「なに泣いてんの」
智が居間に入ってくると、長い指で私のほっぺたをつうっとなでた。
そのままその手を私の肩に置いて強い力で、抱きしめられる。
「俺まだ学生だけど。
なんもできねえガキじゃねえよ」
「……智、離してよ」
智の胸を押し返したけど、もっと強い力で抱きしめられる。
「将来のこともちゃんと考えてるし」
「智、そのことだけど」
私の言葉を飲みこむみたいに、智の唇が私の唇をふさいだ。
「……キスだってできる」
「ちょっ……待っ……」
もう一度重ねられた唇から、強引に智の舌が入ってくる。
頭の芯がしびれて、力が抜けた。
本当はずっとこうなることを望んでいたのに抵抗なんてできる訳がない。
お母さん、ごめんね。
今日だけ、今日一日だけ。
智の首に腕をまわすと、自分から頭を引き寄せる。
深い深い水の底に沈んでいくような感覚。
何も見えない。
何も聞こえない。
溺れて、いく。
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璃桜(プロフ) - 初めて読ませて頂いた作者の方もいて色んな作風が読めて楽しかったです。ゆったりとした雰囲気が儚くちょっと切なく感じました。またコラボの企画があったら読みたいと思いました！これからも応援しています！ (2016年12月12日 21時) (
レス) id: 18ebc3f5e6 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - reiさんのお話、ぐっときてしまいました。やっと自分の気持ちに気がついたのにすれ違いでもぅ会うコトもままならないなんて。後悔をして愛を知るなんて。悲し過ぎる。甘いお話も好きですがたまに涙して毒気を抜いてます。これからも楽しみにしています！ (2015年9月23日 14時) (レス) id: cc888f66ce (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - つむさんのお話大好きです。泣けてしまいました。また素敵なお話読むの楽しみにしてます！ (2015年9月23日 13時) (レス) id: cc888f66ce (このIDを非表示/違反報告)
かしゆか(プロフ) - この作品面白かったです！ところでつむさんに質問なんですけどパスワード解除したりはしないんですか？ぜひつむさんの作品を見たいのですが･･･ (2015年9月15日 0時) (レス) id: a67ea852ce (このIDを非表示/違反報告)
Ame(プロフ) - 5人の作者様のお話がそれぞれ重なりあってて、すごくおもしろかったです。感動しましたし、お腹いっぱいになりました。また是非このような企画があることを楽しみに待ってます！ (2015年4月23日 0時) (レス) id: 8bdb99006e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：tomyummy
x他3人 | 作者ホームページ：
作成日時：2015年4月2日 23時
