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それから、私達は会わなくなった。
会わないまま、私は約束の30歳になってその年のクリスマスイブに雅紀も30歳になった。
カフェの風景はあの日と変わらない。
散って来た桜がテラス席に降り注ぐ。
ヒラヒラ、降って来た花びらがコーヒーカップの中に落ちてプカリと浮かんだ。
「あー...桜、入っちゃいましたね。おかわり自由だし、新しい物を持って来ますよ」
「あ、ありがとうございます」
「蓋...無いな...ソーサーを逆さにして乗っけます？」
「フフッ、それ良いですね」
でしょ？って笑った店員さんの口元に、チラリと八重歯が見えた。
コーヒーのおかわりを待ちながら頬杖を付いて通りを眺めてると、スーツ姿の雅紀が夜の横断歩道を走っ来てすれ違うお兄さんとぶつかりそうになってペコペコと謝った。
ホント変わらない。そんな急がなくっても良いのに。
懐かしい雅紀の姿に、ドキドキと胸が高鳴る。
お店に入って来て私を見付けた彼は、軽く手を挙げテラスに出て来て
そこに座ってる同級生に「あれ、ニノ。また来てたの？」って声を掛けた。
「はぁ？俺は『居る』んだよ。お前が俺のテリトリーに『来て』んだろうが」
「わー、もー面倒臭い。ニノってホント、変わんないね」
「どっちがだよ」
「え？」
彼にシッシって追い払われた雅紀はちょっと口を尖らせながら、私の方に歩いて来る。
「A、お待たせ！」
「ううん。ごめんね、仕事だったんでしょ？」
「大丈夫！急いで終わらせて来たから！俺もコーヒーお願いします」
ちょうどお代わりを持って来てくれた八重歯の店員さんにそう頼むと、「あー、喉渇いた！」ってコーヒーを頼んだくせにそこに置かれたばっかりのお水をグビっと飲み干した。
「で、急にどうしたの？すっごく久し振りだよね」
「うん...そうだね」
「...A？何かあった？」
コーヒーにミルクを入れて、スプーンでクルクル混ぜる。
黒に白が混ざって行く。
言いたい事はある。
話したい事が、ある。
だけど上手く言葉に出来なくて...何でも無いように首を振って、笑って見せた。
「私達もとうとう30歳になっちゃったねー」
「ん？...あー、なっちゃったね。俺達もすっかり大人だね」
「昔は30歳なんて、ずっとずっと先の事だと思ってたのに」
「うん、そうだね。...ねぇ、A。覚えてる？」
雅紀が、フ...っと笑顔を消した。
「俺が、ハタチの時にした約束」
忘れるはずが無い。
忘れられるはずが、無い。
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璃桜(プロフ) - 初めて読ませて頂いた作者の方もいて色んな作風が読めて楽しかったです。ゆったりとした雰囲気が儚くちょっと切なく感じました。またコラボの企画があったら読みたいと思いました！これからも応援しています！ (2016年12月12日 21時) (
レス) id: 18ebc3f5e6 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - reiさんのお話、ぐっときてしまいました。やっと自分の気持ちに気がついたのにすれ違いでもぅ会うコトもままならないなんて。後悔をして愛を知るなんて。悲し過ぎる。甘いお話も好きですがたまに涙して毒気を抜いてます。これからも楽しみにしています！ (2015年9月23日 14時) (レス) id: cc888f66ce (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - つむさんのお話大好きです。泣けてしまいました。また素敵なお話読むの楽しみにしてます！ (2015年9月23日 13時) (レス) id: cc888f66ce (このIDを非表示/違反報告)
かしゆか(プロフ) - この作品面白かったです！ところでつむさんに質問なんですけどパスワード解除したりはしないんですか？ぜひつむさんの作品を見たいのですが･･･ (2015年9月15日 0時) (レス) id: a67ea852ce (このIDを非表示/違反報告)
Ame(プロフ) - 5人の作者様のお話がそれぞれ重なりあってて、すごくおもしろかったです。感動しましたし、お腹いっぱいになりました。また是非このような企画があることを楽しみに待ってます！ (2015年4月23日 0時) (レス) id: 8bdb99006e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：tomyummy
x他3人 | 作者ホームページ：
作成日時：2015年4月2日 23時
