9 ページ18
「阿呆か」
「阿呆って…！」
「どんだけ忘れようとしたと思ってんの？どんだけ…あーもー！なんっだこれ！俺の計画返して！」
「翔……？」
「勢い任せだとか、その場の空気に飲まれてるとか、お前は言う気がしてますけども。つーか既にそれらしきこと言われてるけども！」
「、」
「ちげーから。Aのおばさんのこと聞いてからずっと考えてた」
「、」
「いや、その前から。ずっと…この５年ずっと考えてた」
「翔、」
「だから、今回会いに行こうって決めて帰ってきた。でもいざとなるとすげービビってんだよ、我ながら」
「……」
「今度こそ、お前と一緒に生きたい」
「……っ」
「お前の未来俺にいただけませんかっていう提案」
「なに、それ、もう…」
「お前だけだから。今までも、この先も」
「でも」
「あーのーなぁ。ここはもう可愛く頷くとこなんだけど？」
どうしよう。どうすればいい？自分に都合の良い夢を見てるみたいだよ。
「…いいの？」
「何が」
「ほんとに、ほんとにまだ間に合うの？」
翔は、いつの間にか涙が零れた私の頬をそっと拭うと
「ずーっとお待ちしてました」と笑った。
ここがオープンテラスだということも忘れて。
店員さんが珈琲を持ったまま欠伸をひとつしてそっと見守ってくれていることにも気づかずに。
翔の腕の中に抱き寄せられた私は子供みたいに涙が次から次へと溢れた。
「雅紀がさぁ」
翔は私を抱きしめたまま、懐かしい友人の名前を口にした。
「いい加減、Aちゃんにぶつかってきなよ、ってうるさくてうるさくて」
「雅紀くんが？」
「そう。ぶつかってみないと何もはじまんないよって珍しく正論言われた」
「……」
「ちなみに、さっき居酒屋で会ってたの雅紀よ？」
「え！そうだったの？」
「すげぇ背中押された。多少癪だけども」
そう言うと、翔は私の肩に顔をうずめるようにして「あーまじで緊張した」と噛みしめるように呟いた。「お前、勝手に勘違いして自己完結したがるし！」ってむくれてる。
「こっ恥ずかしいついでにひとつ言っとくわ。カランコエの花言葉、あとで検索するように。以上！」
「ええ？笑」
「約束する。絶対しあわせにするから」
ああもう。好き。翔が、好きだよ。そっと仕舞っておいた言葉を口にすると「悪いけど俺の方が好きだから」と甘く優しい声が降ってきた。
思わず顔を見上げると「何か？」と照れながら、それからきっとしあわせそうに。
翔はあの頃みたいに笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2284人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
璃桜(プロフ) - 初めて読ませて頂いた作者の方もいて色んな作風が読めて楽しかったです。ゆったりとした雰囲気が儚くちょっと切なく感じました。またコラボの企画があったら読みたいと思いました！これからも応援しています！ (2016年12月12日 21時) (
レス) id: 18ebc3f5e6 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - reiさんのお話、ぐっときてしまいました。やっと自分の気持ちに気がついたのにすれ違いでもぅ会うコトもままならないなんて。後悔をして愛を知るなんて。悲し過ぎる。甘いお話も好きですがたまに涙して毒気を抜いてます。これからも楽しみにしています！ (2015年9月23日 14時) (レス) id: cc888f66ce (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - つむさんのお話大好きです。泣けてしまいました。また素敵なお話読むの楽しみにしてます！ (2015年9月23日 13時) (レス) id: cc888f66ce (このIDを非表示/違反報告)
かしゆか(プロフ) - この作品面白かったです！ところでつむさんに質問なんですけどパスワード解除したりはしないんですか？ぜひつむさんの作品を見たいのですが･･･ (2015年9月15日 0時) (レス) id: a67ea852ce (このIDを非表示/違反報告)
Ame(プロフ) - 5人の作者様のお話がそれぞれ重なりあってて、すごくおもしろかったです。感動しましたし、お腹いっぱいになりました。また是非このような企画があることを楽しみに待ってます！ (2015年4月23日 0時) (レス) id: 8bdb99006e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：tomyummy
x他3人 | 作者ホームページ：
作成日時：2015年4月2日 23時
