【銀魂】沖田隊長、約束をしましょう【沖田総悟】

非常に極端に ページ17

何度も言うけれど、沖田隊長は朝に弱い。非常に弱い。極端に弱い。私よりも沖田隊長が早い時間に起きていたことは、恐らく私の記憶が正しければ一度しかない。そしてそれは結構な確率で間違っていないだろう。その唯一の一度は、沖田隊長が私に唐突な接吻をかましてきた日の翌日のことだ。その時のことを思い出すと未だにゆでダコになり悶えて転がりそうになるので、朝、私よりも早く起きて私が部屋を出ようとしたときには彼は着替えていて私の部屋の前で待ち構えていた、という事実のみを思い起こすことにした。それ以外のことには目を瞑る。そんなわけで沖田隊長が自力で私よりも早く起きたことはそれきりの出来事で、あれは幻だったのではないかと思ってしまうほどだ。本当にあれ以来、彼が私の力なくして起きたことはない。そして、それではとても困る。

今日のような奇跡的なことはまず起きない。ほとんどごねることなく起きて……まぁそれにしたってごねたけれど、それでもあのスピードで起床に成功したのは素晴らしい記録だと言える。その上会議にも遅れることなく参加。そんなことはきっとこの先…良くて数年後まではないだろう。残念ながら。残念すぎて肩を落としてしまう。


へいへい、なんて、絶対にちゃんと起きる気がないでしょと自信をもって言えるその返事に溜め息を漏らしては、私は続ける。


「寝不足なんて持っての他ですからね。ただでさえこれから忙しくなるのに…」


…そう、自分で言葉にして、私の胸はギリリ、と一瞬の痛みを覚えた。その痛みにどんな意味があったのかよくわからないけれど、自分で口にした言葉で、私は自分の首を絞めていた。『討ち入り』という単語は、頭には浮かんでいたけれど声には出せなかった。恐らくは、私の怯えがその言葉を塞き止めている。

沖田隊長は、私のことを見据えている。何を考えているのか読めない表情で。いつもと同じ涼しげな表情で。彼は私の顔が一瞬歪んだことに、気付いただろうか。なんとなく、気付かれているような気がした。沖田隊長は、私の変化には目敏い。ちょっとびっくりするくらいに目敏い。だから、見つかってしまっている気がする。けれど、その理由まで読んでいるのかは分からない。


…沖田隊長が、何かを言いたげに見えた。口を開こうとしているように見えた。でも、何も言わないまま、何もなかったように彼は何処かに視線を泳がせている。私も、それにならったわけではないけれど、ピカピカに磨かれた床に視線を落としていた。

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