【銀魂】沖田隊長、約束をしましょう【沖田総悟】

おさらば　沖田side ページ34

＊


「…決めた。俺のこと、護ってくれよ」

「──え、」


…と。俺が呟いたその言葉に、Aはほとんどが吐息で出来ているような、空気にすぐに溶けていって同化してしまうような声を漏らした。俺がそう言ってから一瞬のタイムラグがあって、その僅かな時間にはきっと、Aの中で混乱が形成されていったのだと思う。目を丸くさせて、大きくて透き通った色をした、この世界に存在するあらゆる汚れたものなんて見たこともないような綺麗なそれが、戸惑っているように揺れていた。これから、ひょっとしたらこの世界で最も汚いものをその目で見ることになるのだろうと思うと苦しくなるし、そんなものは見せないで俺の腕の中で護ってやれたらどれだけいいだろうと思う。けれど、俺はもう、その怯えとはおさらばしなければならない。

俺は今。たった今言ったのだから。決めたのだから。随分と前に一度は決めたのに、しつこくもまた足を竦ませてしまったけれど、今度こそ、本当に決めたのだから。俺は逃げることを無視するように、未だに俺の中に確かにある自分勝手で臆病でどうしようもないエゴイズムを視界から追いやるように、真っ直ぐに目の前にいるソイツを。Aを見つめた。


…まだ混乱していて、真ん丸になった目に、少しだけ笑う。


「…え、じゃねェ。俺の願い、叶えてくれんだろィ？」

「…え、あ、はい……え、いや…」

「嫌なのかィ？」

「いえいえいえ、そういうわけじゃないんですけど…」


俺がわざとらしく落胆したように溜め息混じりな声を発すると、慌てたように首を横に振るA。こんなときだというのに、俺のドS心は今も健在なようで、そんなソイツにいたずら心が芽生えまくってしまう。けれど、戸惑い慌てるAを更にいじる訳にもいかず、こんなところで勘弁してやることにした。

予想外だったのだろう俺の言葉に、言葉をなくしているらしいAは、俺に続きを促すような目を向けている。


先程まで執り行われていた勝負に課せられたリスク。それは、敗者が勝者の願いを叶え、勝者は敗者に願いを叶えて貰える権利を得る、というものだ。俺はAに勝利し、Aに願いを叶えて貰える権利を手にしているのだ。

よって俺は、その願いを述べたのだ。


「俺のこと、護るっつったろィ。さっき、その口で」

「…はい」


恐る恐るというように、Aはそっと頷く。それを見てから、俺は続ける。



「なら、護ってくれよ。一番隊、副隊長として」


それが、俺の決めた願いだった。

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